ゴミ袋を転がされて僕の姿は相手に丸見えになった筈、なのに反応がない。
不思議な雰囲気が流れ今まで瞑っていた瞼をそっと上げて目だけで男の人を見る。
最初はぼんやりとしていたけど徐々に暗さに目が慣れてきて男の人の姿が浮かび上がる。

その人は白髪の中に残る元々の色だと思う宝石みたいな、この真っ暗な路地でも分かるほどの金髪を短く切りそろえていてその髪を後ろに撫で付けている。
上等そうな黒のスーツに黒のワイシャツ、黒のネクタイと黒の革靴、そしてサングラスという全身黒ずくめで覆われた胸板は厚い。
顔は見た100人の人がイケメンと言うだろう、しかし多くのシワがあるから老人なのかもしれない。それ以外は屈強な40歳くらいの男性みたいな風貌だ。

男の人は僕のことを真っ直ぐと見ていた。暗い路地ではサングラスは意味ないだろうにどうしてつけているのだろうか。不思議に思い暫くの間男の人の見えない瞳を凝視していた。するとなんの合図もなしに男の人は形の良い唇を小さく開いた。

『生きてますか?』

その声は柔らかく、しかし威厳に満ちた凛々しい声だった。いつもなら死体のフリをするけど何故かこの人の質問には答えなくてはいけない気がした。これは運命だった。


あとがき
とても短いですね、次も短いですよ。






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