現パロ



元旦の朝。ギルバートは家に居ないことが多い。それは、友人であるオズと初詣や年末年始を過ごすことが多かったからだ。
そんな彼が、2012年今年。今年は家に居て、コタツに入って、寛いでいる。
「にい…さん…?」
「ん……?おはよう、ヴィンス」
朝、ベッドから起き上がり、リビングに向かうとヴィンセントは唖然とした。てっきり、居ないものだと思ったからだ。
が、今年はちゃんと居る。それが嬉しくて彼はついギルバートに抱きついた。
「ヴィンス?」
「今年は家に居るの?兄さん」「あぁ。オズはエリオットたちと初詣に行くらしい」
「へえ」
「すまないな、毎年一緒に入れなくて」
ギルバートは苦笑する。そんなこと気にしなくていいのにとヴィンセントは呟いて、抱きしめる力を少し強める。
「良いんだよ、僕は兄さんと一緒に入れるだけで幸せなんだから」
「ヴィンス…」
そう、それだけで嬉しいんだ。ヴィンセントはそれだけで幸せだった。
それが、今年は一緒に過ごせるなんて…ヴィンセントには思っても見なかったことだ。
どさり
「あのー…ヴィンセント?」
「なあに?兄さん」
「これはどういう状況だ?」
「どういう状況って…?」
彼の言いたいことを解っていてあえてヴィンセントはとぼける。
「今のこの体勢だ!」
そう、この体勢。ヴィンセントがギルバートを押し倒したのだ。
幸い、コタツの横に押し倒され布団がクッションになったから頭は打たなかったが・・・
ヴィンセントは「あぁ」と呟き、続ける。
「別に、大した意味は無いよ。僕が兄さんの顔を見たかっただけ。それだけだよ」
「だからといって押し倒さなくても………」
押し倒さなくてもいいだろ!とギルバートは言うつもりだった。だが、彼は少し考えた。
そういえば、ヴィンセントはほとんど一人だ。自分が傍にいる時間だって限られている。
―もしかしたら、ヴィンスは寂しいのか?甘えたいのか…?
そう考えると、言おうと思った言葉も出なくなってしまった。
「……どうしたの?兄さん」
「ヴィンス……」
「なあに?」
ギルバートは少し頬を赤らめ、恥じらいながらも必死に声を絞り出す。
「………今日は…お前の…好きにして、いい…ぞ?」
「っ!……兄さん…」
こんなこと、滅多に言わない。けれど、大切な弟のためなら…その思いの一心だった。
「ありがとう、兄さん」
「ヴィンス……」
何をされるかなんて予想がついてる。
「じゃあ、遠慮なく」
ギルバートはとっさに目をつぶった。
どさり
「え……?」
目を開けると目の前に弟の姿はなかった。周囲を見ると、彼は自分の隣で寝そべっていた。
「クスクス……驚いた顔してるね、兄さん。そんなにナニがしたかった……?」
「なっ!べ、別にそう言うつもりじゃ……ただ・・・ヴィンセントだったら……」
顔を真っ赤にしてごにょごにょとだんだん声が小さくなっていく兄をヴィンセントは愛おしく思った。
そしてクスクス笑って口を緩める。
「言ったでしょ?僕は兄さんの傍にいられるだけで幸せなんだよ」
「ヴィンス……」
そう言ってヴィンセントはギルバートを抱きしめて彼の胸に顔を疼くめる。
ギルバートもふっっと笑って彼を抱きしめ返す。
「愛してるよ、ギル…」
「俺もだ、ヴィンセント」
こうして、幸せな兄弟は深い眠りへと落ちていく。


fin


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