お友達ができました。

今年、高校1年になった。クラスには知ってる奴もいれば知らない奴も居た。
桐谷奏螺。こいつもまた、後者に入る奴なんだが……どうやらこいつの保護者と俺の兄貴は知り合いらしい。
兄貴たちは桐谷の事を「可愛い」だの「優しい」だの言っていたが、俺にはそうは見えなかった。
何故なら、普段のあいつは無口で無表情。ほとんど喋る事が無いからだ。
ふと、俺は斜め前の席に座る桐谷を見た。綺麗な蒼色の髪を揺らして黒板と手元のノートを行ったりきたり。
周りは桐谷の髪を染めているのだろうと噂し、不良というレッテルをはっている。
けれど、俺からしたらその綺麗な蒼は染めた色には見えない。それに、桐谷が授業をサボったところを俺は見たことが無い。
ルックスだけで他人を不良と呼ぶのはどうかと思うが、他人のことに口出しするほど俺は真面目でも正義でもない。

「玖月、これ、桐谷くんのプリントなんだけど……渡してくれない?」

授業も終わり、昼休みに入るときクラスの女の子が俺の前に立った。
プリントって昨日のだっけ…?そういや、昨日休んでたっけ、あいつ。

「良いけど、何で俺?自分で渡せばいいじゃん」

「だって……桐谷くんと喋った事ないし…なんか、近寄りがたいって言うか……」

なるほどね……
俺はため息をついて席を立つち、斜め前の桐谷の元まで行く。
俺が近づいた事に気付いたのか、教科書などをしまう手を止めて前を向く。
俺の目の前には髪と同じ綺麗な蒼色をした瞳があった。周りは俺と桐谷に注目していた。
そりゃ俺が桐谷に話しかける初めての人間だからな。注目して当然だが……ちょっとウザイ。
桐谷の蒼い目が「何か用?」といっている。何か喋ったわけでもないのに汗が伝うのがわかる。
ただプリントを渡すだけなのにここまで緊張するとは思っても見なかった。

「これ」

ついに俺は桐谷にプリントを差し出した。
桐谷は首をかしげる。

「お前、昨日休んでただろ?そんときのやつ」

簡単な説明をしてやると桐谷はプリントを受け取った。それを確認すると俺はホッと胸をなでおろした。

「じゃ」

それだけ言って立ち去ろうとすると誰かが、俺の制服の袖をつかんだ。
振り向くとそれは桐谷だった。

「ありがと」

男にしては声変わりしていないアルトヴォイスだった。蒼い目を少し細めて彼は微笑んでいた。
俺は思わずニコリと笑い返した。
周囲はひそひそと話しているようだが、今の俺にはそんなの気にならなかった。

★☆

放課後になるといつも俺は不良どもに絡まれる。家柄が関係していていい加減にしてくれといいたくなる。
全く、良く毎度毎度こんな事ができるなとつくづく思う。
いつものごとく十数人いるやつらを相手にするのかと思っていたのだが、今日は違うようだ。
体育館裏に連れて行かれた俺を桐谷が見ていたからだ。ホント、凝視してるよ。
俺はふと思いつき、望み薄で桐谷に話しかけてみる。

「あのさ、見てるんだったら手伝ってくれね?」

なんて、華奢な身体してる桐谷に言うだけ無駄だろと後悔した俺だったが返ってきた答えに俺は目を見開いた。

「良いよ」

桐谷は不適な笑みを浮かべていた。壁側に鞄をおき、桐谷は俺の隣に立つ。

「ほっそい身体して俺らに勝てると思ってるのか」

相手のリーダーっぽい人がそう言うが、桐谷は表情を崩さなかった。
そして、向かってくる不良どもを蹴散らしてった。殆どが足技で確実に相手を気絶させていく。
けど、一人が桐谷の四角に入ってしまった。

「桐谷!」

俺はその四角に入った相手を蹴散らす。
一息ついたと思ったら、まだ敵は何人か居る。一歩一歩と後ずさるとひとつの背中とぶつかった。
それは桐谷ので、互いに背中を預ける形になる。ニヤリと笑い合うと俺たちは再び不良たちに立ち向かって行った。

★☆

倒した不良どもを体育館裏に山積みにして俺たちは学校を出た。

「いやぁ〜助かったぜ」

「別に大した事じゃないよ」

棒アイスを口にしながら俺たちは横に並んで歩く。

「桐谷、強いんだな……」

「そんなこと無いよ、ふつう。」

まあ、紫紀が保護者って言うんだからそれなりに強いんだろうな

「睦月さんから良く聞いてるよ、君の事」

「睦兄から?」

桐谷はこくりと頷く。
そーいや、情報屋行くのって毎回睦兄だっけ。

「なんて?」

「んー…玖月は可愛い!とかツンデレ!とか?」

「はあ?!兄貴そんなこと言ってんの?」

「うん。俺が学校通いだしてからノロケ話聞かされるかな…」

マジかよ…ものっそい恥ずかしい…
俺は恥ずかしさを紛らわすためにアイスを口に突っ込む。
甘くて冷たいシャーベットが口の中に広がった。

「睦月さんに、君と仲良くしてくれって言われてたんだ」

「え…?」

桐谷は苦笑してアイスをかじる。
そういえば、俺も紫紀に仲良くしてくれって言われてたな……

「けど、俺って自分から話しかけるのって苦手でさ…」

桐谷また苦笑してアイスをかじった。
そういえば、桐谷がこんなに喋ってるとこ初めて見た。
こいつ、不器用なんだな…俺はクスリと笑った。紫紀の言う通り、可愛いじゃん、こいつ。

「じゃあこれから仲良くしてくれよな!奏螺」

俺はアイスを左手に持ち替えて右手を桐谷に差し出して笑った。
桐谷…いや、奏螺は一瞬蒼い目を見開いたがすぐに笑って差し出した俺の手を握った。

「ありがとう、玖月」

こちらこそよろしく
奏螺はそう付け足した。


あとがき
奏螺と玖月がお友達になった話。
玖月視点で書いて見ました。

[ 7/7 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -