Clap
感謝します


「はっくしょん」
俺はくしゃみをした。べつに風邪をひいているわけでも、花粉症なわけでもない。
この時期。北風が吹く寒い時期。どうも俺の鼻はおかしくなってしまうようだ。
「おやまあ、大丈夫ですか?」
腰周りに抱きついている綾部は言う。
「んーまぁ、大丈夫っちゃあ…大丈夫だけど」
「ここ最近、先輩よく鼻を赤くしてますね」
「トナカイみたいに」と綾部は自身の顔を俺の腹部にうずくめる。
トナカイって…まあ実際そうなんだけどさ…
俺は鼻をすすった。その光景を見ていたのか綾部はくっついていた身体を起こして顔を近づけてきた。
ーっ近っ
「あっ綾部…?」
いきなりのことで俺は戸惑ってしまう。さっきまで冷たい風に当たっていて冷え切った顔も熱を持ち始め、みるみるうちに顔が赤くなっていく。彼の相変わらずの無表情な顔がゆっくりと俺の顔へと近づいてくる。
ーえっ……これって…まさか…
とっさに目をつぶる。しかし、自分が予想していたこととは違っていた。
「んー…熱は無いみたいですね…あ、でもちょっとあつい」
え…?熱?
そういえば、額に何かが触れている感覚がする。
おそるおそる目を開くと、目の前には恋人の顔。
どうやら俺の額に触れたものは彼の額らしい。…熱測ってたのか
離れていく顔に少し寂しく思いながらも俺はため息をつく。
「おや、熱いと思ったら、顔全体的に真っ赤ですよ」
「もしかして、キスされると思ったんですか?」綾部は少しニヤけながら付け足す。
愛しくて仕方が無いこの恋人に図星をつかれて俺は耳まで熱を持つのがわかった。そんな己の顔を綾部は楽しそうに見ている。
ああ、もう。こうなればヤケクソだ。
俺は無理矢理綾部の腕を引っ張り、彼の唇にキスを落とす。
「っ!」
綾部は相当驚いているようだ。…そりゃそうか。おかげで余裕が出来てきた。
唇を離してやると、彼の顔は見事に真っ赤になっていた。
そして、俺は顔を赤くしている恋人に言ってやる。
「お前だって、鼻だけじゃなく、顔全体適に真っ赤だぜ」
fin









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