俺のため、だろ?
なまえ
長編主。革命軍参謀総長補佐官。サボの恋人。


**


「…サボ」
「なんだ?」
「早くこの積み重なった書類を片付けてくれないかしら?」


怒られるのは私なの、と声には出さずになまえは告げた。革命軍参謀総長であるサボの補佐官を務めるなまえは現在、サボの部屋で書類を片付けるサボの見張りという任務を任されていた。
ロードワークのような外の仕事なら積極的に進んでいくサボだったが、どうしてもデスクワークが苦手なのか書類は溜まってしまう事が多かった。そのため、期限間近となると彼の補佐が主な仕事であるなまえが見張りという名の手伝いをする事になる。それでも今回はいつもにまして量が多く、終わりが見えてこなかった。


「つってもなぁ…終わんねぇよ、この量」


そうぼやくサボになまえは一つため息を落とすと、言葉を零した。


「貴方が溜めなければこんな事にはならなかったはずでしょう?私だって言ってくれれば手伝うのに…」
「なまえ…悪ぃな、」
「別にいいわよ、今はこの書類をやってくれれば」


仕事をこなすサボの横でなまえはティーカップを持って珈琲を啜る。彼女の目の前にも彼と同じように書類が重なっていた。だが、それはサボが目を通しなまえがまとめたものだ。これだけの量をこなしてもまだ半分近くの量が残っている。
さすがに普段のなまえならばこれだけの量を一気に片付けろなどとは言わない。だが、今回はサボが特に溜め込んでしまったのだ。


「なまえ」
「…何かしら?」
「ちょっとこっち来て」
「ちゃんと、仕事はしてくれるのよね?」


おいでと自分を招くサボに少しだけ怪訝の目を向けながら素直に従うなまえ。そんななまえに気を良くしたサボは近づいてきたなまえの腕を引っ張り自らの方へと引き寄せた。そのままなまえはサボの胸へと飛び込んでしまった。


「きゃっ!」
「おっと…」
「何するの……」
「いや?」


抗議の声を上げるなまえの声を無視してサボは手を伸ばす。サボの手はなまえの頬を伝い、彼女の柔らかそうな紅い唇に触れる。そしてかるく上唇を押し上げて、指を口の中に含ませた。するとなまえは「…んっ」と声を漏らして、その頬は薄く紅く染まっていた。抵抗するように腕をつかむなまえの手はやはり夜叉族であるためか常人よりも強いが、それでもサボの手をどけるには至らなかった。


「…ね、なまえ」
「な…に……?」


口の中に差し込んでいた指を出すとその指と舌が銀色の糸が繋がっている。その目はすでに潤んでおり、それがさらにサボの加虐心を揺さぶった。


「……はやく、仕事」


それでも仕事をさせようとなまえはサボを睨む。サボはにこりと微笑むとそのままなまえを抱きしめ、耳元に口を寄せる。


「なまえはさ、おれが仕事溜めるといつも来てくれるよな」
「貴方が仕事を片付けくれないとわたしが怒られるのよ?」
「じゃあ自分のためなの?」
「…当たり前よ」
「嘘つけ、








(うるさい……)

(知ってる)

お題サイト・確かに恋だった
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