金木犀

毎年、この季節には この香を楽しみにしていた。
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金木犀
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アカデミーに来る途中の小さな公園にそれはある。
今日は オレンジ色の可愛らしい花が疎らに咲きはじめていた。

「もう少しかな」
もう少しすれば、風にのって その強すぎない芳しさはここら一帯を包むだろう。
「何がもう少しなんですか?」
「わあぁっ、」
にゅぃっと視界の端から異物が飛び出てきた。
「気配消さないでください!」
「‥‥この匂い、金木犀のことを言ってたんですか?」
人の話しを聞いてないなコイツ、と思いながらも 首を縦に振ってやる。
「良い香りですよね」
「いや〜。オレは鼻がバカになりそうなんで あまり好きではないです」
早く離れようと言わんばかりに人の手を引っ張っていくこの上忍は
いつも吐き気がするくらいロマンチストなのに、どうしてこういう時は現実主義なのだろう?
「鼻が良すぎるのも困りもんですね。鼻がバカになったら任務に支障がでるんで、強制も出来ませんが」
それでも、ステキだと思ったことは 好きな人と感覚を共有したいものだ。
「あー、拗ねないでください。理由ならちゃんとありますから」
金木犀の香りも届かなくなった辺りで ようやくカカシさんは振り返る。
「理由、ですか?」
「そ。」
スッ、と口布が引き下げられた顔が近づいてきた。
予想だにしないことに体が固まる。
「あんな香りがつよいんじゃ、イルカ先生の匂いまでわからなくなるもの」

こめかみに青筋がうきあがりそうだった。
もう数日したら 落ちかけそうな金木犀の花を ポケットいっぱいにして帰ってやろう。
この変態が無断侵入して待つ 自分の家に。

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真琴様が書いて下さったこの続きが 贈答品にあるので、ぜひそちらもご覧になってください。

移動:2010/10/24 黒月 カイム

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