キリ番4000(蓮假様)……性格の悪い彼は年下の彼:番外編/甘
「イエス!慰安旅行!温っ泉♪温っ泉♪」
「その前に自分の仕事くらい終わらせとけよー。」
デスクの上に乗っている小さなカレンダーに赤の太いペンで今日にバツ印をつける。
慰安旅行、すなわちタダで旅行に行けるということだ。
それがあと二日というところまで来ている。
今しがた上司から置かれた書類を端によせ机に伏せながらカレンダーを見る。
ここ最近、仕事が忙しくても、どんなに寝れなくても、……寝れなくても!
この楽しみの為に愚痴はちょっとしか吐かずに頑張ってこれた…!
すべてのネルフ職員が行けるわけではないので、皆いける日はバラバラになっている。
ちなみに総務部は総務局一課、三課が一緒になっている。
実はこの慰安旅行にチルドレン達も含まれていたりする。
一応、彼らも立派な戦闘職員だからね。
席を立ち、上司の小言をすり抜け通路にでて、彼の姿を探す。
「お、いたいた、シンジくん!」
カヲルくんを探していたわけではなく、実はシンジくんをターゲットにしていた。
運良くすぐ見つかり、彼に近づく。私に呼び止められたことに驚いたのか、目を見開いている。
うん、その顔可愛いね。
「ぼ、僕に何か用ですか?」
「そんなにおどおどしないでよ。取って喰いやしないよ?」
なんだか子犬を連想してしまった。どちらかというなら撫で回したい。
とってこーい、なんていって何かを投げて戻ってきた彼をすごく愛でてあげたい。
「シンジくん、この前言ってた件、どうした?」
「ああ、アレですね。はい、ちゃんと名前さんと同じに日にしましたよ」
「よっしゃ!じゃあゆっくり話せるね!」
シンジくんに頼んでいた、『同じ日に慰安旅行に行きたい』というお願いは聞き入れてもらえたようだ。
ちなみにチルドレン達は自分の勉強とかもあるので、期間中ならどの日にとってもいいという事を聞きつけシンジくんに猛アピールしたのだった。
カヲルくんと一緒でも良かったのだけれど、学校でのカヲルくんの話なども聞きたく、そしてなによりシンジくんとの交流も深めたかったため、本人に言った。
シンジくんとの交流なんていつでも出来そうなものだけれど、いつも隣にはキラリと目を光らせている少年がいるので、中々話せそうもなかったからいい機会なのだ。
「そういえば、名前さんにあったら、ってカヲルくんから伝言を預かってるんでした。」
「…………え?」
「『そうはいかないよ』って……」
苦笑い。ですよねー。あのシンジくん至上主義が見過ごすわけないよねー。
ということはカヲルくんも一緒なんだ、そう思ったら、ちょっと周りに花が咲きそうだ。
「嬉しそうですね。」
「あ、あはは、バレた?まあ、当日話せたらいいね。」
「はい、僕もそう思ってます。」
彼はふにゃっと笑い、失礼します、と帰っていった。
さて、私も仕事を終わらせなきゃ。
そして、眠気と疲れをなんとか栄養剤等で押さえ込み、―慰安旅行当日。
「滝が近くにあるんだ、この温泉…!」
「あまりはしゃいで落ないようにね、名前さん」
「すみません、保護者に勝手に名前さんの名前を書いてしまって。自由行動が僕らだけじゃダメなんて知らなくて…咄嗟に思い浮かんだのが名前さんだったんですよね」
「ノープロブレム!むしろこれで話せる機会増えたし、お姉さんにドンドン学校での出来事やら恋愛相談やら人生相談やら、今夜の女子風呂の覗き方とかを聞きなさい!」
「聞いていいんですか…?!」
「いや最後のは私に聞かれても多分答えれないけれど」
お土産やさんをフラフラとまわり、どっぷりと暗くなって宿泊施設に戻ってきた。
部屋に戻り浴衣へと着替えて、ちょっと髪の毛を浴衣に合うようにセットし、
大広間にいくと既に料理が用意されていた。
空いてる席に座り、皆が揃ったところで宿をとったであろう代表者がマイクでスピーチをしている。
碇総司令や冬月副司令はいないようだ。…いつもの姿を知っているので温泉に入ってゆっくりしている姿を想像が出来ないけれど。
挨拶も終わり、乾杯を済ませると一斉に箸を食事に付け始める。
私は前にいる、よく話したこともない人にビールをつぎ、とりとめない話をしていたら
いつの間にか隣にシンジくんが移動していた。
「周りがミサトさんよりタチの悪い人達ばかりでした……あ、髪型と浴衣、似合ってますね。」
「んふふ、ありがと。お酒は人を変えるからねー。ほら、うちの上司みてよ、ベロンベロンで寝てるわよ」
「あの、……名前さんも酔ってます?あれ、確か名前さんの上司じゃないと思うんですが…」
「ん?そうなの?目が霞んでて……ちょっと酔いすぎたのかなー?」
「少し風にあたってきます?そういえばカヲルくんもいないし、僕もお風呂入ってこようかと思いますし」
「そうしよっかな。」
よっと席を立ち、襖をあけてからひと呼吸。
寝不足だとお酒のまわりも早いのかもしれない。立ち上がった時の心拍音も早いようだ。
部屋に戻り、着替えをとってトボトボと女湯へと向かっていくと女湯の前にある黒い椅子の前に浴衣姿で瓶を持ったカヲルくんが立っていた。
「女子風呂覗こうとしてるの?」
「思いっきり背中を向けているのにどうやって見れるんですか……これ、なんですか?普通の椅子とは違いますよね…なにか書いてあるわけでもないですし……」
左右に行き来して興味津々に見つめる彼に悪戯心が生まれた。
それに座ってみればわかるんじゃない?というと彼はおずおずと座り、どうするの?と見上げてくる。
こ、これはなんだか、酒の威力もあって心臓が壊れそうだ。
すごいこの見上げてくる感が可愛い…っ!
と、あんまり悶えているとカヲルくんからなんと言われるかわからないので隣にしゃがみ、隠れていたリモコンを手にとる。
とりあえずフルコースでいいか…。肩もみ足もみマッサージに……
スタートボタンを押すと、面白いくらいにカヲルくんの体がビクンと跳ねた。
「ひ…っ、ひ、…!」
「………その押し殺そうとしているけれど押し殺せていない笑い方をやめてくれないかな…?」
睨まれてしまったけれど、顔がほんのり赤いので全然怖くはない。
私はそのまま笑っていると諦めたのかため息をひとつついて
深くマッサージチェアに体を埋める。
……その後ですが、私の顔が真っ赤になっています。
ええ、なんというか、初めてのマッサージに慣れないのか、たまにピクンと体が跳ねる。
体が押されてなのか掠れた声が口から漏れる。
しかも機械のウィンウィンとなる音がまた、なんとも言えない感じ……
…漫画でマッサージしてると別の人が聞き耳を立ててそういうヤラしい事やってると勘違いを起こすことがあるけれど、まさにそれで、隣で聞いてても間違えそうだ。
目をそらすと変な方に考えそうでカヲルくんを見るけれど、声を聞いた瞬間に恥ずかしくなる。
うう…大人失格だ……汚れた大人だ……
「なに、考えてるんだい?」
バッと顔を見たら余裕そうに微笑む彼。
ま、まさか……!
「何考えてたか僕に全て教えて下さいよ?ねェ、名前さん?」
「う、う、……カヲルくんのバカー!イケメンー!!」
私は女湯に駆け込んだ。
……いつになったら私が彼に優位に立てる日がくるのだろうか。
結局、慰安旅行はドキドキして全然休めなかったという思い出になりました。
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キリ番4000 蓮假様リクエスト
年下の彼…以下略の連載番外夢でした。
自分が書く甘い夢は糖分は控えめですね。
ダイエットにオススメです。
蓮假様、キリ番報告とリクエストありがとうございました!
連載夢をリクエストされる日がくるとは思ってもみなかったです…!
頑張って下さいといわれると、ホント、頑張っちゃいます。ええ、嘘じゃない。