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  キリ番69000(アマネ様)……True Gray/甘微裏


僕が生きていた中でここまでに後悔と動揺と照れくささが同時に襲ってきたことがあっただろうか。
……多分3秒と経たずにNOといえるだろう。

事は遡ること数刻前。
名前の一言で僕は今死んでも構わないと思えるくらいの出来事が始まった。


「な、渚先輩、良かったら、その映画に行きませんか……?あの、私なんかがお誘いするなんておこがましいですが……。」


その小さい可愛い手には二枚の前売りチケットが力強く握られシワが入っている。
あまりにも力が入っているのかふるふると小さく痙攣までしていた。

いや、それ以前に僕は、今、名前にデートに誘われなかっただろうか?
さっきの言葉を録音でもしていれば今巻き戻して再生ボタンを押していただろう。
だが残念ながら今は録音をしていない。
(電話がかかってきたときくらいしか録音できないからね)

僕がポカンとしていたせいかどんどんと名前の顔は曇っていき、しまいには泣きだしそうになってしまった。


「も、もちろん。僕で良ければ一緒に同行させてほしいな。」


いやきっとこの手に握られているのは僕だけではなく、他の人もどうですか、と二枚渡すはずだ。落ち着け。と早まる心臓をおさえるために必死に自分に話しかける。


「その今日、よろしくお願いいたします……。」


そうおずおずと渡されたのは二枚のうちの一枚。……僕は何も言えず一枚を受け取ると名前は一礼してその場を去った。


……これがちょっと前の話だった。
もうこれだけでも十分に嬉しいことだし、あまりにも都合が僕の妄想かと思ってしまったけれど、このあと更に嬉しいことがあった。

メールで待ち合わせし、現地での集合となり映画館までいくと既にそこには名前の姿が。
先程見たときと髪型と化粧の仕方と羽織っていた上着が違う。デートという事で変えてくれたのだろうか。
一つ一つ変化を見せてくれるたびに写真へと収めたい気持ちを押さえ込み受付へと向かうとそこにいたスタッフにこう言われた。
これが今僕が後悔と動揺と照れくささが同時に襲ってきている理由となる。


「ペアデーという事でお二人が仲いいところを見せて頂ければ割引をさせていただきます。あ、手を繋ぐ、という感じで大丈夫ですよ。」


そう、簡単でしょ?とでも言いたげな口調だった。
簡単なわけがないだろう、と顔に出そうにもなった。
僕はもちろん、名前がそう簡単に、はいわかりました!と二つ返事でいうわけがない。彼女の方を見ても案の定どうしようという顔で固まっていた。


「僕は別に普通の料金でも大丈夫だよ。」


名前と手がつなげるなんて嬉しいことだけれど、無理してまで割引をほしいわけでもないし。
しかし僕の言葉に名前はふるふるとゆるく首を振った。


「つ、つないでも……いいですか?」


ああ、だから、僕はさっき学ばなかったのか?録音をしておけば良かった。
もう二度とこんな幸運くるはずがないのに。
さっきまで聞こえてこなかった心音がばく、ばく、ばくと音をあげていく。

いいのだろうか、と手をだすと名前はゆっくり僕の手を握る。
指先は少しだけ冷たくて、手のひらはふにふにとしていて柔らかく僕の手の平に吸い付いてくるような触り心地だった。名前の体温が僕に移ってじんわりと温かくなる自分の手。

そしてその時、少しだけ欲張ってしまった。

指を少しだけ移動させて名前の指と指の間に僕の指をいれこむ。
まるでそこが性感帯になったかのようにゾクゾクと僕に快感を与えてくれた。


「はい、ありがとうございます!割引をしましてお二人様各1000円になります。」

「……あ、はい!」


僕の行動に少し驚いていたのか名前は顔を赤くして僕の顔を凝視していたがスタッフの声で我に返ったのか繋いでいた手をするりと放し財布を取り出していた。

僕も同じように財布を取り出し、映画まで時間があるからという事でお手洗いへと向かう。

……もちろん、用を足すためではなく先程の行為で硬くなってしまった自身の処理の為だ。


「……っ、」


個室に入り、自身を取り出したあと背徳感に襲われながらも自分の手へと舌を伸ばす。
舌の先が少し当たっただけなのに下半身ははしたなく反応し、理性も効かなくなる。
舐めていくのをどんどんと広げていき、唾液でベトベトになった手を自分の性器へともっていく。
滑りがよくなったその手で扱けば、名前に間接的に自身を触れさせているという僕にとっては最高の興奮剤を受けたことですぐに達してしまった。


「あ、渚先輩、もう入場できるそうですから行きますか?」

「……そうしようか。」


トイレから出ると、何も知らない純粋な笑顔で名前が待っていてくれた。
小さくごめんね、と謝ると遅かったことに謝ったと思ったのかいえいえと小さく笑う名前。
……もちろん、このあとにあった映画も緊張してあまり内容が入ってこなかった……。
全体的に後悔と動揺と照れくささが残るデートだったから、次、もしも次があったら今度は格好良くエスコートさせてね。


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キリ番69000 アマネ様リクエスト
True Grayで甘夢でした!……甘いのか?
ただ手を繋ぐだけという話なのですが、まあ、True Grayと言ったらこんな話になりますよね(開き直り)

アマネ様、リクエストありがとうございました!
想われてみたいとのことでしたので、True Grayのカヲルなりの想われ方だったのですが……、本当にこれで大丈夫だったのか果てしなく不安です……。
視点もお任せだったので、カヲル視点でさせていただきました!
……こんなの望んでたのと違う、ということでしたらあの書き直します。いや、それくらい不安な仕上がりでした……。


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