キリ番60000(ひな様)……渚カヲル育成計画/日常
ジリジリと肌を焦がす太陽の光を走って避けて行く。
避ける、なんて言っても夏の日差しというものは下からもやってくるものだ。
顔にあたる熱気を手で防ぐ。
「うー……あっつー……。」
走ったせいで余計にじんわりとかいていた汗は、やがて大きな粒へとかわり頬を流れていった。
信号で停止して、空を見上げる。その空は青く澄んだ色に白く輝く入道雲がありいかにも「夏」というようなものだった。
赤色の信号機はやがて青色へとかわり私はまた歩みを進める。
といっても、もう走る体力もないし学校まではすぐそこなので日陰に入りながら学校へと向かう。
目指しているのはこの学校の図書館だ。実は今日は日曜なんだけれど、部活動の生徒がいて学校は開いてるしそれに伴い図書室もあけるということなので予約のようなものを先生にとりつけて登校してきた。
もちろん、私一人だけではない。一緒に勉強をしようと約束していた友達もいる。
学校に入り、通り抜ける風に少し体を冷やしながら図書室のドアの前で立ち止まる。
……汗くさくないよね?と自分の制服をくんくんと臭ってみたけれど大丈夫そうだったのでそのドアをあける。
「おはよう!カヲルくん!」
思った以上の大きな声で挨拶してしまった。ここは図書室だというのに。
その場に先生も生徒もいなかったので問題はなかったようだ。
奥の方にいたのか本棚と本棚の間からひょっこりとカヲルくんが顔をだした。
「おはよ、センセ。元気よく挨拶したね。」
「あはは、テンション高いままに来ちゃったから。みんながいなくてよかった。先生は?」
「職員室にいるんだって。さっきまで別のヒトもいたけれど、帰った。先生はなにかあったら呼びに来てってさ。」
「そうなんだー……図書室涼しいね。クーラーついてる。」
少し疲れたのでカヲルくんのバッグのあった席に座ると何冊かの本を片手に持ちながらカヲルくんも私の前に座った。
「喉乾いたんじゃない?僕2本飲み物あるけれど。」
「ふふ、カヲルくんって2本持ち歩いてる事多いよね。いただきます。」
彼からスポーツドリンクを受け取り、蓋をあける。
少し時間が経ってるのかペットボトルも汗をかいていたけれど、それも気にせず喉に流し込む。
少し酸味のあるスポーツドリンクは私の体に染みこんでいくように流れていった。
カヲルくんはその光景がまるで珍しいかのようにずっと私を見ている。
「ぷはっ。」
「いい飲みっぷりだね。そんなに喉が乾いてたの?」
「そうそう。少し走ってきてさ。」
「……ああ、だから透けてるんだね。」
「え?」
一瞬何が透けているのかわからなかったけれど、カヲルくんの視線で気づく。
自分の制服を見ると汗でぴっちりとひっついた少し透けた制服。
大部分は見えないけれど、それでもばっちり下着の色は見えるわけで。
バッと隠し、なんの恨みはないけれどカヲルくんを睨みつける。
「なんで言ってくれなかったの!?」
「今言ったよ?」
「もっとオブラートに包んで!」
「汗かいてるね。」
「それじゃ伝わらない!!」
「今日つけてる下着の色をいうとか?」
「やめてええ!!!」
耳を塞いで顔を下げる。もちろん見えている部分の下着も隠しながら。
早く乾かないだろうか。冷房も付いているし乾くのは早そうだ。
というか夏用制服が薄いのが悪い気がする。もっとしっかりしてていいんじゃないかな?
暑いのなんて毎日のことだし……。
「恥ずかしい……。」
顔を上げて塞いでいた手を外すとカヲルくんはお腹を押さえながら俯いていた。
肩が震えるているところをみるとこれは、笑ってる。
「カヲルくん!!!」
「図書室では静かに、だよ。名前。」
目元が笑ったままで少しだけ涙目のカヲルくんが口元に人差し指をあててしーっという動作をする。
「……じゃあ、カヲルくん、こっち見ないでね。」
「なんだ、残念。了解したよ。こういうのはあまりジロジロみるのも悪いしね。」
カヲルくんは席をたち、おもむろに着ていたシャツを脱ぎ出す。
彼も暑くなって一枚脱いだのだろうか、とぼんやり彼のオレンジ色のTシャツ姿を見ていたらバサリと頭の上にそのシャツを被せられた。
「?!」
「それ、乾くまで着てたら?ヒトがくるかもしれないし。」
「え、え、あ、ありがとう……。」
ふわりと香る柔軟剤のような匂いが鼻をかすめる。
よく隣に並ぶと匂うにおい。
そのシャツを頭から下ろして羽織る。少しだけ大きいカヲルくんのシャツ。
……なんだか、せっかくクーラーで下がった体温がまた上がって、
身体が火照ってきちゃったな。
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キリ番60000 ひな様リクエスト
育成計画で初夏の二人でした!
渚氏は口に出すし、それをいい眺めだななんて普通にいいそうですよね。
そして久しぶりのリクエスト消化でした。ホントに久しぶり。
ひな様、リクエストありがとうございました!
いろいろ考えてくださったみたいでありがとうございます!
初夏といって一番最初に思い浮かんだのがこのネタでした。(お前)
ご期待に添えていればいいのですが…最後に、ほんとにありがとうございました!