自爆アンケート夢……渚カヲル育成計画/日常…?
「ほな、親睦会っちゅーことで、肝試しするで!」
放課後、惣流さん曰くの三馬鹿トリオがワイワイと騒いでて、惣流さんと洞木さんが話してて、私と渚くんで貸してた本の感想を言い合って、
綾波さんが本を読んでいたそんな時に鈴原くんの声が上がった。
メンバーは今残っている8人でするようで。
「ちょうど女子4人、男子4人やし、男女ペアでええな!」
「ちょっと、鈴原!何言ってんのよ!肝試しって、夜やるものでしょ?!そんな時間に出歩くのはダメよ!」
「かったいなァ、イインチョーは。ええやん、ちょっとくらい」
「がきっぽ。………」
否定した惣流さんがつまらなさそうにため息をついたのも束の間、
すぐにニヤリと笑い、すっと手をあげた。
「やっぱ、アタシ行くわ。ヒカリ、アンタも行くでしょ?行くわよね。
ハメを外すとかそんなんじゃないわ。日本の学校もそうでしょうけれど
学校で学ぶことは勉強だけ?他人とのコミュニケーションをとる勉強の場でもあるわ。」
「う、……つまり、クラスメイトと仲良くするのも勉強の一環、ってこと?」
「そ。それに保護者つれてけばいいんでしょ?」
「ううう……、わかったわよ…」
「さすが惣流やな!というわけで苗字と渚も強制参加や!」
「ひゃい!」
突然よばれて変な返事になってしまった。
内容言ったら心配されそうだからお父さんと
おかあさんには嘘をついて抜け出そう……。
ちらっと隣をみると渚くんは渋い顔をして首をかしげていた。
あれ、もしかして渚くんは来れないのかな…?
「ねェ、苗字サン。」
「ん?何?どうしたの?」
「……肝試しって参加する側は何をすればいいの?確か危険なトコにいくんだよね?」
「……もしかして初参加?いや、私もだけれど…。
とりあえず、懐中電灯くらいかな?あとお財布とか携帯とか…?」
「え?危険なトコに行くのに武器とか必要じゃないの?」
「武器?!お化け触れないよ?!」
「ン?」
どうやら私達はいつもどおり会話のすれ違いを起こしていたらしく、
渚くんに肝試しの説明をした。
そして、一旦家に帰り、御飯を食べて集合場所にいくとみんなが既に集まってしまっていた。
保護者の方は結局これなかったらしく、子供たちだけみたい。
「ご、ごめんなさい!遅くなりました!」
「構わん構わん。苗字が最後やないしな。ったく、渚なにやっとんねん。携帯も返信せーへんし。まだ返せるようになってないんかい」
「うん、多分……」
苦笑いをしてから数分後、時間ぴったりに渚くんはやってきた。
手ぶらの印象が強い渚くんだけれど、背中には少し大きめのバッグ。
思い当たるフシが一つ……
―武器持ってきちゃった!
「な、渚くん、殴ったらダメだからね……っ!たたりにあうから…!」
「なんのこと?」
「あれ?そういえば、今日の驚かし役って誰がするの?」
「いや、おらん。この林道の先に廃墟のお堂があるからそれを写メって帰ってきて終いや」
「はいはーい、役者揃ったからクジひくわよー。はい、鈴原。」
順番は鈴原くん、洞木さん、相田くん、惣流さん、碇くん、私、渚くん、綾波さんと
惣流さんの手の中にある割り箸を引いていった。
私四番……でもこの順番はなんでだろう…?と首をかしげていたら
「あー!私この番号、今日運勢でダメって言ってたのよね!ヒカリ!変えて!」「オレ、この番号嫌いなんだよね!シンジ!交換してよ!」
そんな声がほぼ同時にあがった。皆がキョトンとしていると
惣流さんが「ほら、見せるわよ!」と割り箸を出してきたので反射的に
皆前に出す。
「あ、アスカはかったわね……!」
「なんのことかしらー?おほほほ」
「おー!委員長とトウジかー!うん、いい組み合わせだね!うん!」
一番、鈴原くんと、洞木さんのペア。二番、相田くんと綾波さんのペア、三番、碇くんと惣流さんのペア。四番……渚くんと私のペア。
「アンタ達ってホント、なにやっても一緒になんのね。歓迎会の時も一緒じゃなかったっけ?」
「さァ?意図的にやってンじゃないんだけれどね。そういう運命じゃない?」
「ぶはっ!」
渚くんが変なことを言ってたので思わず吹き出してしまった……
女の子らしからぬ、吹き出し方だったなぁ……
なんだかんだで肝試しは順調に進み、私たちの番になっていた。
懐中電灯を渚くんがもち、サクサクと前に進んでいく。
渚くんは怖いもの大丈夫そう。
私は生ぬるい風となんだかカサカサと物音がずっと近くから聞こえてきていて、
少し泣きそうなくらい怖かった。
こんな時は話してた方が気が紛れるよね……
「な、渚くん!ご趣味は……」
テンパってお見合いみたいな質問しちゃったあああ!
ものすごい恥ずかしくなり、一瞬でさっきの考えてたことがどうでもよくなっていた。
「趣味…なんだろ……リリンの観察?」
「ほ、ほどほどにしててね!?」
そういえば最近よく目が合うけれど、まさか……!?
ようやく、なんとなく渚くんがわかってきた気がするんだけれど、
興味のあるものをとことん調べたいみたいで、
私もどうやら興味対象としてみられているらしい……
これ、恋愛対象じゃないところが残念なところ。
まあ、恋愛対象は多分碇くんじゃないかなって思ってるけれど。
「じゃあさ、今度は僕からの質問。歓迎会の時にシンジくんに言ってた『好みのタイプに料理の出来る人を追加したいくらい』って、他にどんなのがあるの?」
「………うん?あれ、そんなこといったっけ…いったような…ないような…というかよく覚えてたね?」
「記憶力はいいほうだからね。他「にゃあーご……」……」
「ひい!なななななにかな!今の声!凄いちち近くで聞こえたね!!は、早く行こ…っ!!」
立ち止まってしまった渚くんをおいていくわけにもいかず、
ぐいぐいと渚くんの袖を引っ張る。
しかし、びくともしない渚くん。まさか、立ったまま失神してるの?!
渚くんの顔を見てみても無表情。
「な、渚くぅん!」
「……バレちゃったなァ」
「え……?」
ボソっと言った言葉が聞き取れず、聞き返すと背中に背負っていた
バッグを下ろす。
バッグを開けるとそこから可愛いお顔が飛び出してきた。
「わ、……ね、猫?」
「そ。近所の野良ネコ。ついてきちゃってさ。そのまま放置でも良かったんだけれど、車にでもひかれたら後味悪いだろう?
かといって抱き上げたままあの場所に来たら怖がって連れてきたみたいでさ。それはヤだから。」
「ふふ、可愛い黒猫だね。なんだか」
―渚くんに似てるね。
なんて言おうと思ったけれど「可愛くない」ってふてくされそうだから、
やっぱりやめた。
渚くんは首をかしげたけれど、なんでもないと返して座っていた姿勢から立ち上がる。
「よかった、この音だったんだね、ずっと何かの音が聞こえてたから」
「あは、やっぱり聞こえてた?」
そこからは二人と一匹で林道を過ぎ、お堂に付き、私の携帯でお堂をとって引き返してきた。
帰ってきて早々、凄い勢いで惣流さんが「ちょっとさっき撮ってきた写真みせて!」と駆け寄ってきた。
どうしたんだ、と思うくらい皆の顔も蒼白になってる。
「………、やっぱり、これも、返すわ」
「え、なに?何かあったの?」
渚くんも私の携帯を覗き込む。
写っているのは暗いから、よくはわからないけれどお堂はちゃんと写っている。
「……全員の携帯の写真に、……髪の長い女性が写ってるんだ。……お堂の後ろ」
碇くんが、私に目をあわせず告げる衝撃の言葉。
ゆっくり視線を携帯に落としてみると、手が震えてくる。
震えて画面が見えなかったのか、渚くんが手を押さえてくれた。
「これ。」
渚くんの指が、とある場所で円をかく。
そこに写っていたのは、紛れもなく人が写りこんでる。
あんな人も来ないような廃墟のお堂で……?
顔は髪が長くて垂れ下がっているので見えない。
でも笑っている気がする。
私は顔を携帯から皆の方に向けると気まずそうに顔を伏せる人、私の方を向いてる人、それぞれだったけれど、皆いい顔はしていなかった。
あの綾波さんですらこちらを向いていない。
誰かがぽつりと「とりあえず帰ろうか」と提案し、私たちは解散することになった。帰りは男女ペアの二人で帰ることになり、私は渚くんのご好意で送ってもらうことになりました…
本当にごめんね…、おうち遠くないといいんだけれど…
「何事もなくて良かったよ。」
「そ、そうだね…一応、身体的には何事もなかったね…精神的にはすごく異常に起きたけれど…!」
「まァ、身体的に何かあった場合は僕、武器を持ってきていたし、それを使ったまでだよ。」
―やっぱり持ってきてたんだ!
ちなみに後日談だけれど……
「あの写真はデマよ。私が連れてこようと思った保護者が悪戯心でやったらしいわ。
…ったく、ミサトったら。しかもファーストは気づいてたらしいけれど、言わなかったってさ。知ってたら言いなさいよってね…!」
「えええ?!そうなの?!」
「夜遅くに出歩かないための予防と、ちょっとしたお茶目心……らしい。ホント、悪かったわね、ウチの保護者が」
「そ、そんなことないよ!これで夜は安心して寝れるね!」
それに、私が怖がっていたせいで渚くんがほぼ毎晩電話してくれてたから、
これで罪悪感がなくなりそうだ。今日、真相を話して迷惑をかけてた事に謝らないと。
……ちょっと残念だけれどね。