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  キリ番25000(雨夜様)……性格の悪い彼は年下の彼:番外編/日常


――ふと、カヲルくんの宿題ははかどっているのだろうか。そんなことが気になった。

朝起きて、下で寝ていたカヲルくんは今日しなくてはいけない宿題があると
起きて早々いっていたけれど、その顔は万人が見ても蒼白で。
いや、いつも白いんだけれど、更に青白くなっていた。

明らかに体調が悪い、そんな感じなのに
彼は仕上げなければと、たまに見せる頑固さに押されて宿題をさせていたけれど……。


「流石に静かすぎる……。」


仕事に行く準備をしてのんびりしていたけれど、隣の部屋からは物音一つすらしない。
宿題をしているならば少しくらい背伸びをしたりして生活音が聞こえてくるものだけれど……。

ベッドから起き上がり、制服を着てドアを開けるとカヲルくんは机に突っ伏して寝ていた。
なんだ、なんだかんだ言って宿題をしていないじゃないか。
とは思ったけれど、朝の彼の顔を思い出す。


「カヲルくん……、そんな所で寝たら風邪ひくよ……?」


声をかけても彼は無反応。そんなに熟睡しているのかな……、
不安に思って顔を覗き込むと朝とは正反対に顔を真っ赤にして苦しそうに息を繰り返す彼の姿があった。


「ちょっと!カヲルくん!風邪ひくよっていう前に風邪ひいてる!」

「うる、さいなァ……。」


彼らしくもない、どストレートな文句。おお、珍しい。
なんて言ってる場合じゃなく。


「あ、苗字です……室長います?」


上司に連絡をとり、今日は休みにしてもらった。明日は通常業務の二倍働くという条件で……。明日の私、ガンバ……。

未だにぐったりとしているカヲルくんをよそにまた別のところへ電話をする。
彼の通う中学校だ。こんな状態でいかせるわけにはいかない。
これならば、宿題うんぬんも考えなくていいだろう。


「でも、珍しいよね、カヲルくんが焦って宿題するなんて。」

「宿題は、終わってます。……ただ、みんなに教える、用でノートに、まとめ……。」


喋るのもキツイのか単語単語をつなぐ様に喋るカヲルくん。
なるほど、他人用のノートをまとめていたのか……、アンタどれだけ善人だよ。そんな身体で。

ぐったりしてるカヲルくんの腕を持ち上げ、自分の肩に回す。
……おや、なんだかこれは前もしたことがあるぞ。デジャブだ。
彼をいつも私が使っているベッドへと連れて行き、座らせておでこに触れてみる。
かなり熱い。本人もぼんやりしているのか考えを放棄したような瞳で私を見ている。


「男性が襲いたくなる気持ちが少しわかった気がする。」

「早くこの場から立ち去ってください。」

「冗談に決まってるでしょ。というかカヲルくんも風邪をひくことなんてあるのね。なんでも化物なみにこなしちゃうから人間じゃないと思っていたのに。」

「ごほっ……!」

「きつそうね……、何か欲しいものある?」

「名前さん。」

「ばっ……!!!!」


ななななな何を言ってんだこの子!!
カヲルくんからの熱が移ったかのように私の頬もじわじわと熱があがる。


「名前さん、すみません、眠いです。」

「呼んだだけか……!」


私の勘違いだった。すごく恥ずかしい。
そうよね、今冗談言ってる余裕なさそう……。
ゆっくりと寝かせてあげて、布団をめくる。それと同時にカヲルくんが布団の間に身体をいれる。
ほこりをたてないように布団を下ろすとすぐに彼は眠りに落ちたようだ。


「薬、飲ませたほうが良かったかな……、とりあえずおでこ冷やしてあげよう。」


タオルを一枚取り、水で冷やした後にキツく絞り、彼の前髪をかき分ける。
端正な顔は今はきつそうに歪められ、眉間にシワがよっている。
風邪の時は悪夢を見るときが多いけれど、もしかしたら今悪夢を見ているかもしれない。


「いい夢、見てね。」


濡れたタオルを彼の額に乗せて、彼の髪の毛のサラサラと溢れる感覚を少し楽しんだあと、立ち上がる。
とりあえず、食べるものと薬とあと頭冷やすものを持ってこよう。





そして帰ってきたらソファの下にぐったりと座り込んでいるカヲルくんの姿を見て心拍数が異常にあがった。


「ちょ、カヲルくん!大丈夫!?トイレ行こうとしてたの?!」

「名前さんが……、いなかったから……。」

「嬉しい事言ってくれるな、少年!録音したいくらいだ!ただ買い物行ってたんだよ、ほら、起きれる?」

「汗をかいてるので、……着替えをしたいです……。」


その言葉に私の思考は停止する。
着替え、着替え、……汗を拭かなきゃいけないけれど、あれだよね、私が拭かなきゃいけないのよね?


「とりあえず……おかゆ作るから、薬飲んでからね。」


こくりと小さく頷く。声も多少枯れているから水分もとらせたほうがいいかも。
……しかし、無理して私を探そうとしてくれたのか……、と思うと私の乙女心の部分がくすぐられているような感じになる。
可愛いというか、愛されているというか。頼られているというか。必要とされているというか。

とりあえず、もう一回寝かそうとしてベッドのある別室に連れて行こうとしたが、カヲルくんは動かなかった。


「カヲルくん……、どうして動かないのかな?」

「見ておくよ、君の料理姿。」


なるほど、朝もそうだったけれどカヲルくんはどうやら風邪をひくと頑固になるのか。
普段、自分を押さえつけているような子だからこういう一面が見れて正直うれしい。

……だがしかし!実はおかゆなんて作ったことがなくてレシピを検索しながらなんだけれど……あまり見られたくはないなあ。

立っていられなくなったらしく、彼の身体はずるずるとと下に降りていきペタリと座り込んでしまった。


「もー、薬飲んで身体拭いたらちゃんとベッドで寝てよ?」

「けほっ……、了解……。」


結局、出来上がったおかゆをその場で食べて、薬も飲んでもらった。
さて、と……、ここからが私にとっての正念場である。
目の前には真っ白な肌。少し汗ばんでほんのりと赤い。一番最初から正面は恥ずかしすぎて背中を向けてもらっているんだけれど……。

十分に恥ずかしい、私は生娘か。

タオルをすべらせ、彼の身体を拭う。ほくろひとつないスベスベとした綺麗な肌は思わず触れてみたくなるほどで。


「カヲルくん、前はどうする?」

「拭いてもらえますか?」


そういいながらこちらへと振り向いた。振り向いた瞬間、カヲルくんは小さく吹き出した。


「顔、僕より赤いんじゃないのかな?」

「うるさい、黙りなさい、黙らないとその肌触るわよ?」

「どんな脅し文句ですか。」


少しだけ、元気になっているようでいつものからかうような口調になっていた。
私はカヲルくんの首元へとまずタオルを這わせ、そして胸元へと滑らせる。
カヲルくんはずっとそのタオルの動きをぼんやりと視線で追って行っている。

胸……、を拭くのはいささか恥ずかしく、サッと拭いてお腹あたりに移動すると「わかりやすすぎます」とまた笑われた。そんなに元気になったのなら自分で拭きなさいよ……。


「はい、終わり!早く着替えなさい!」

「うん、ありがとう。」


Tシャツを渡すとのろのろではあるけれど、着替えを始めた。いつものカヲルくんなら意地悪をしてくるはず。
裸で悪戯とか勘弁してほしい。最悪、私の思考回路はショート寸前、状態になる。
いや、ショートする。


「カヲルくん、してほしいこととか、食べたいものとかある?」

「……名前さん。」


お、同じ手には乗るものか!ちょっと動揺したけれどね!


「名前さんが傍にいてください。」

「へ……?」

「僕が元気になるまで……。」

「……、元気でも傍にいるよ。」


彼は嬉しそうに微笑むと自分の足でベッドの部屋に入っていった。
パタンとしまった音を聞いてから私は手を顔に持っていく。うん、熱いな。


「不意打ちはずるい……。」


……しばらくするとドアがあいて、そこにはケロリと平然に立っていたカヲルくんがいた。名残で額には私が買った冷えピタが乗っていたけれど。


「回復力も化物なみね……。」

「褒めていただいているのかわからないですね。すみません、ご迷惑をおかけしました。……けほ……。」


小さく咳をしたけれど、うん、大丈夫そうだ。
風邪薬が強かったのか、それともカヲルくんの回復力が異常なのか。
額に乗っていた冷えピタを剥ぎ、ゴミ箱へと捨てて彼はにっこりと笑った。

……なんだか嫌な予感。


「風邪ひいたのは初めてでしたけれど、ああやって看病するんですね。
名前さんが風邪をひいた際は僕も同じことをいって同じことをしてあげますね。」

「やめて!」


主に汗拭きのところ!
……そしてまんまと一週間後に風邪をひいてしまった。

風邪にはご注意!



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キリ番25000 雨夜様リクエスト
題名長いから以下略日常夢でした!←

彼らの日常は本当にただの日常です。
今回は甘指定ではなかったので糖度は低めにしようと思ったけれど、
あれ…若干甘い…?
管理人的には仲の良い姉弟という感じで書いてたのにな…。

雨夜様、リクエストありがとうございました!
自分なんかの小説に惚れていただいてありがとうございます!
管理人は、日常が、大好きです!!!!




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