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  キリ番23000(なぎこ様)……新劇カヲル/悲恋


「カヲルくん、私と付き合って欲しいな!」

「……それは、また突然だね。」


彼はまたたきを何度かパチパチとした後に呆けた顔をした。
告白の返事はすぐには返ってこなかった。

彼との出会いは学校の帰り道、廃墟に不思議に佇んでいたピアノを興味深げに見ていたので私が声をかけたのがきっかけだった。


「弾かないの?」

「……そうだね、誰かが聞いてくれるのであれば弾こうかな。良ければ近くで聞いてくれないかい?」


彼の音色は高く澄んだ青空によく似合う音だった。
一緒に弾いてみないかと誘われたけれど、そんな綺麗な音を邪魔したくなかったので遠慮をした。

そして、彼とはその日からちょくちょくと会うようになっていった。
私の想いも彼に会うたびに徐々に積もっていった。


「どうして今日に言ってしまったんだい?」


彼の告白の返事はこの言葉だった。
今日?今日は別に何かがあったわけではない。
仏滅とかそんな事を気にしたのだろうか?しかし今日は仏滅だったのかな?


「僕の想いは何かを代償にしなければならない、とは思っていたけれど、得られるものが寂しさともどかしさという感情だっただけか……。」

「カヲルくんはたまに難しいことをいうよね。」

「独り言みたいなものさ。独り言ついでにもう少し聞いてくれないかい?」

「どうぞ、独り言なら私に気にしないで。」

「名前にはこれからきっと、色んな壁が立ちふさがるだろう。けれど、決して諦めては駄目だ。いつだって希望はあるからね。幸せになるための希望さ。」


何を弾くわけでもなく、カヲルくんは人差し指でぽーんぽーんと跳ねる様に鍵盤を叩く。
彼にしては珍しい弾き方。考え事をしているんじゃないだろうか。
顔も伏せてはいるけれど、どこかさみしそうな雰囲気だ。


「私の名前がでてきた。」

「僕は独り言でも君の名前を呼ぶよ。」


カヲルくんは軽く失笑していた。普段一人のときも本当に私の名前を呼んでいるのだろうか。
その時は私は彼の傍に飛んでいきたいのだけれど……どんな内容かも気になるし。


「どうか、幸せになって。それが僕からの答えだ。」


そして彼は「さあ、時がきた。」そう言って立ち上がった瞬間、爆風があたりに砂埃を巻き起こす。
砂埃が痛くて腕で顔を隠し、収まった頃に腕を下げたらいつの間にかカヲルくんがいなくなっていた。

爆風が起こったであろう方向を見るとどこかの組織が所有していると言われているエヴァンゲリオンと何か白い人のようなものがいた。


「あれは、授業でみたことがある……セカンド、インパクト……?」


違う、今度は3度目だから、サード・インパクト。
それがまた始まるんだ。悲劇はいつだって傍にいるといったのは誰だったか。
こんなに突然訪れるものだとは思ってもいなかった。

途端に、絶望感に襲われ力なく私は地面に座り込んでしまった。
意識もどんどん遠くなり、最後に彼の顔が見えた気がした。


「カヲル、くん。」


……そして。あれから14という長い年が通り過ぎた。
彼が失踪して14年、たった。
結局、サード・インパクトはすべての人を消滅したわけでもなく、突然終わりを告げた。
これをニア・サードインパクトと名づけた。詳しくは、誰も教えてくれなかった。

そして私は彼が失踪して最初の3年くらいは学校からの帰りなどに彼との思い出の場所に寄っていたけれど、結局、大人になってからは足が遠のいてしまった。

彼の姿かたちを今だって覚えている。
儚げに揺れるその瞳はいつだって私を見てくれていた。

だから、私も彼の存在を覚えているし、探している。


「もう、私も大人になったのにね。」


立ち寄ったのは、彼と話していた場所。
彼の誕生日が近いということもあって、ちょっとした期待を込めて足を運んでみた。
けれど、やはり、……彼の姿はどこにもなかった。


「ピアノも随分と前に撤去されちゃったしね。」


彼が座っていた椅子や彼のしなやかで美しい指がなぞっていたピアノはもうどこにもない。
時の流れは感傷にも浸らせてはくれないようだった。

……突然後ろから首に腕が回り込んできた。
真っ白い両の腕が首に負担をかけないよう軽く私を抱きしめる。


「少し、背が伸びたかな?」


柔らかなその声に金縛りにあったように体は動かなくなる。
私はこの声の持ち主を知っている。
振り向きたいのに……。


「僕は必ず帰ってくるよ。友人を幸せにしていないんだ。僕に過ちを正そうとした友人をね。
それに……、君にもまだ伝えていないことや話したいことが沢山あるんだ。」

「……っ。」

「だから、また会おう。きっとその時は……。」


首に巻かれていた腕がスッと視界から消えると同時に体も軽くなる。
急いで振り返り彼の姿を見ようとしたが、そこには何もなかった。

14年も待ったのに、会えたのが一瞬だなんて。


「……カヲルくんのばかっ。」


いつまでも待たせて、私をおばあちゃんにさせたら一生面倒見させるんだからね。
空を見上げると、何かが起こっているのか丸い光がパン、パンと連続して見える。
でも、彼の言うとおり、またさっきみたいに突然に会える気がしていた。

――遠いところで、澄んだピアノの音がした。



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キリ番23000 なぎこ様リクエスト
後ろから抱きしめて励ますシーンを含んだカヲル夢でした!

QのTV放映後の事、とお伺いしてましたので勝手にQ仕様に。

ニア・サードインパクトの考察がかなり面白かったので
これは皆さんにもオススメします。
(検索はニア・サードインパクトとは、でお時間あるときにどうぞ)
なるほど、それでMark.6があの場所にいたのか、ふむふむってなりました。

ていうかそもそもQが管理人にはちんぷんかんぷんなので、
だから小説がないっていう事実があります。だれか正解を教えて。

なぎこ様リクエストとご報告ありがとうございました!
なんか今回もリクエストの内容とは若干違う感じになってしまってますね…(苦笑)
すみません…、こ、心の拠り所は渚氏だったのです…!(言い訳見苦しいぞ)



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