夢小説-シンジ- | ナノ


窓の一つ隣。僕の席。
席替えの時に、最初は窓側じゃなくて残念だと思っていたけれど、
最近はそれでよかったのかもしれない。窓側だと日差しが痛いほど突き刺さる。

僕の隣の席。窓側の彼女。

燦々と降り注ぐ日の光に負けず、先生の言葉を子守唄のようにききながら
うとうととしてる、苗字。

シャーペンを握っている手も、もう力もなく、カクン、カクンと揺れるたびに
ぐらぐらと揺れている。


(そろそろ、見つかるかな。)


どちらかというなら、彼女が先生に見つかるより、
僕が彼女を見ているという事が見つかることが恥ずかしいから前を見る。

前を向いて、黒板に書かれている文字をそのまま書き写す。

彼女を見るようになったのはその席替えの時から。
別になんとなく、空を見たくなって窓の方を向いたら、
彼女が窓の外を向いて顔を赤く染めていたのを見つけた。

彼女の目線の先には多分、グラウンド。
……好きな人がいるのかな?

そんな誰かに恋をしてる苗字が気になってしまった。
もちろん、恋愛とかじゃなくてだけれど。


かしゃん、と軽い音が教室に響いた。
左下を見たら足元にさっき見たシャーペンが。

ついに落としたな、と思いながらシャーペンを拾い、彼女に渡す。


「はい、……居眠りもほどほどにね。」

「ご、ごめん…、ありがと…見てたんだ…。」


照れくさそうにひそひそと声を潜めながら頬をかく。

彼女は椅子へ座りなおすとまた外をむいた。
……そんなに外が気になるのか?


「こら、苗字、どこを見ている!次の三行目から読みなさい!」

「え、あ、…えっと…、…教科書を忘れました。」

「……たく、隣の人に見せてもらって読みなさい…」

「はい……、ごめん、碇くん、机くっつけても、いい…?」

「いいよ、ほら、ここから」


とん、と指をさして渡せば、またお礼をいって起立した。
読み始めて、少しして席に座る。

彼女が教科書を机の半分のところにおいて、ノートになにか書き込んでいる。

そのノートが差し出される。
寝ていたせいか真っ白なノート。そこの真ん中あたりに

『本当にありがとう!』

と書いてあった。よくお礼をいうんだな、と思ってたらすぐ引っ込めようとしていたので、軽く左手で止める。
不思議そうに苗字はこちらを見てきた。シャーペンの芯をカチカチと出し、
続けて書いてみる。


『いつも外を見てるよね?何か面白いのあるの?』


そう書くと彼女は驚いたように僕を見る。
そんなに驚くことでもないけれどなぁ。


『なにもみてないよ!』

『グラウンド見てるのに?』

『グラウンド?』


書いたあとに苗字の手が止まる。
彼女を見てみるとうーん、と首をひねったまま固まっている。

とりあえず固まっている間に今、先生が書いている事をノートに書き写そう。

サラサラと隣から聞こえて、目線を苗字のノートに戻す。


『私、恥ずかしいと目をそらすんだ』


今度はこっちが首をひねる番。
なんでそんな事今言うんだろう、と思ってから会話を脳内でつなげる。

ああ、そっか、じゃあ苗字が見てたのはグラウンドじゃなくて目をそらしてたのか。


『恥ずかしがり屋なんだね、何に対して恥ずかしかったの?』


しばらく固まる。
なにか地雷を踏んでしまったのかもしれない。

謝って会話を終わらせようかなと思ったら、彼女が先にシャーペンを動かした。


『好きな人と目があうの。』


なるほど、と納得してしまった。
それは確かに目をそらすかもしれない。というか僕はそもそも
人と長く目が合うことは得意としないから、そうなったら僕だって顔をそらして
外を見るかもしれない。

そういえば顔が赤いのはそのせいだったのか。

僕が返事をかかないでいると苗字は一人で書き続けた。


『最近よく目があうの』

『もしかしたら空が好きなのかもしれない』

『もしかしたら私を見ているかもしれない』

『そんなこと考えてたら余計に彼からの視線を感じるたびに外を見てしまうようになったの』

『隣が全然見れないの』

『ねえ、碇くん』


『碇くんは、空が好き?』


そんな風にかかれていた。
彼女を見ると顔を真っ赤にして伏せている。

もしかして、もしかするけれど、
それって……

自意識過剰かもしれないけれど、それから意識して彼女をみるようになったのは
すぐあとの話。




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