いつから彼を目で追うようになったのか。
儚い雰囲気の彼は、押したら壊れそうで。

そんな彼に恋はしていない。
彼に対して感じる感情は、


「多分、狂気に似た感情。」


自分のものにしたいとか、そんなつもりもないが
彼にだけ、異常に感じてしまう狂気の感情。

夕方、彼と私だけの教室。二人だけの空間。

彼は授業が終わり、人も帰り、二人だけの空間で本を読んでいる。
私から4つ前のいる彼の席。ここから見えるのは白い頭と
白い背中と、白い首筋だけ。

―その細い首を、そっと包んで、そして徐々に力を入れて。


目を瞑って彼の姿を思い浮かべ、後ろから抱きしめるかのように首を閉めるイメージをする。
どんな顔をしているかわからない。
見てみたい。


「苗字さんは、帰らないのかい?」


声をかけられた。目をあけてみると音もなく振り返っていた微笑みを浮かべた、渚カヲル。
特に親しくもない私の名前を覚えていたらしい。


「少しばかり、人を殺していました。」

「そうかい」


さして興味もなさそうにカバンに本をしまう。
ドン引きされてもおかしくない解答なのに、彼はそれさえも受け入れてしまう。


「……そうだね、…君が世界を救うのならば、僕を殺してもいいよ」


自分の首に手をあて、小さく力を入れた気がする。



「世界、……そうね。そうしようかな。その時は、貴方の首を優しく包むように、……」

「ふふ、待っているよ。」


そういって彼は自分のカバンを持って出て行った。
じゃあ、ちょっくら、私も世界を救ってこようかな。



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彼女はネルフ機関に務めるようになる、数年前の話。
でも、もうそこには使徒も、渚カヲルもいないんだ。

そんなお話、みたいな←


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