「え、歓迎パーティーするの?」

「そ。アンタの足の完全復活の祝いも兼ねてね。」


足を指さされて思わず自分の足を見る。
そこにはもう包帯も巻かれていない自分の足がある。

といってもこの包帯は随分と前に取られていて(目立つからね)
もう傷跡もよくよく見ないとわからないくらいに回復していて、それくらい日付が経っている。
……つまりアスカちゃんはみんなで騒ぎたいんだろうな、と予想。


「何笑ってんのよ。その笑みなんかムカつくンだけれど。」

「いひゃいいひゃい!」


ぎりぎりと力いっぱい頬をひねられてしまった。
その手をぱっと離してもらい、携帯を開く。カレンダーで予定を確認しながら日程を聞くと「明日」とあっさりと言われてしまった。

あまりのあっさりさに聞き間違いかと思い彼女の顔を見るともう一度同じ声のトーンで「明日」と言った。


「え?!きゅ、急じゃない?!私は暇だけれど、渚くんとか!」

「アイツはいつも暇だから大丈夫よ。シンジが誘いにいってるみたいだし、断るわけないでしょ。」

「た、確かに碇くんが誘ったら断らなさそうだけれど……。」


なにか頼みごとなどあるときに碇くんが渚くんに話しかけた時、断ったところをみたことがない気がする。……逆の時は渚くんはほとんど断られているけれど。
それに一度了承してるし、時間が合えばオッケーをくれそうだなあ、とぼんやりと考えていたら教室に碇くんと渚くんが入ってきた。

碇くんはこちらに気づくと自分の席に向かおうとしていたのに方向転換をしてこちらに歩いてくる。


「アスカ、苗字、さん。」

「あ、私も呼び捨てでいいよ。」

「……うん。苗字も明日はこれそう?」

「うん、明日はよろしくね。」

「『も』、って事はあのニヤけてる奴もくるのよね?」

「渚も参加だってさ。」


碇くんの視線が私達の方から別の方に向いたのでアスカちゃんも私もその視線の先を追うと、こちらが気になっていたのかこっちを見ていた渚くんと目があう。
渚くんはその位置からでも聞こえていたのか、何故かオッケーサインをだしている。


「げ、地獄耳かしら、あれ。」

「聞こえなさそうな位置なのにね。」

「とりあえず明日は僕の家で。場所はここになるから……。」


一枚の紙を渡され、内容をみると綺麗な文字で住所と近辺の目印になる建物が書いてある地図だった。いつの間に書いたんだろう。
でもこれさえあれば、今は携帯のナビとかもあるしたどり着けそうだなぁ。


「当日楽しみにしてなさいよ!盛大にお祝いするんだから!」

「アスカ、そんなに渚が来たことと苗字の怪我が治ったことがそんなに嬉しいの?」

「ばっ、ばっかじゃないの?!アタシはそういうイベントが好きなだけよ!シンジ、ちゃんとご飯作らないと承知しないからね?!ふん!」


アスカちゃんは照れくささを隠すためか大股で自分の席に戻っていく。
戻ると同時に碇くんはゆっくりとした動作で私の耳に手を当てた。いわゆる、ひそひそ話をする体勢だ。私もその動作に耳を傾ける。


「アスカね、苗字が怪我したの自分のせいだと思ってるんだよ。急がせてしまったし、苗字の方を確認してなかったからって。だからちゃんと治って良かったって内心喜んでるんだよ、アレ。」

「え、でも私が転んだの足元を注意してなかった私のせいでアスカちゃんはなにも……寧ろクラスメイト、どころか先生と一緒に全校生徒を誘導してたからしょうがないことなのに。」


あの化物との戦いのときに飛んできたガラクタを避けたのはいいけれど、足元にあった段差に躓き、転んでしまった。その時に出た血が思った以上に多くて……
まるで自分の血が抜けたかのように真っ青になるアスカちゃんの顔を今でも思い出せる。
あれからずっと後悔してたら、と思うと申し訳ない反面、少しだけ嬉しかった。


「まあ、それが許せないのがアスカのいいところなんだろうね。じゃあ、そういうことだから明日は沢山楽しんでね。」

「うん!ありがとう!」


そのお礼の言葉を聞きながら碇くんは自分の席へと戻っていった。
ああ、そういえば渚くんは……と思い渚くんに目線を戻すと何故かこちらを睨んでいるような表情を浮かべていた。それも一瞬でパッと前を向いて肘をついてそれ以降は私の方を見ようとはしなかった。

……あれってもしかして碇くんとの距離が近かったから嫉妬したのかな……。
シンジくんの隣は僕だって。
……う、なんかごめんね。




06
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -