育成計画 | ナノ
学校の帰りの事。

自動販売機の前で佇む渚くんをみつけた。


「渚くん、よかったらおごろうか?この前、私をシェルターに送ってくれたお礼に」

後ろから話しかけると振り返り「君か」といった。

よかった、覚えててくれた。


「奢ってもらえるなら嬉しいな。あは、ちょうどどっちにしようか迷ってたんだ。」

「2つ買うの?!」

「?もちろん片方は自分で出すよ?」


いや、それ以前に2本もの水分をいれるんだと驚いてたんだけれど

……笑ったら、なんだか幼く見えた渚くん。いつもムッスーってしてたからなんか
ちょっと嬉しかった。


「じゃあ、君はこっち買って?僕こっちの飲み物買うから」

「うん、了解!」

「あは、元気いいね。」

頼まれたものと自分のを買うと、先に買い終わって

ベンチに座って待っている渚くんのもとへ駆け寄った。


「お待たせ!えっと、となり座って……いい?」

「ドーゾ」


体をずらして場所をあけてくれると私はそこに座らせてもらった。

ち、近い……!もっとそっちにずれてくれればいいのに…あと一人分くらいあっちにスペースがあるから…

「ねェ、君名前なんだっけ?」

―忘れられてる!!!


「わ、忘れちゃったんだね…私、苗字……」

「違う、名前。ファーストネームの方。」

「え、……えっと、名前…だけれど、どうして?」


……一瞬、空気が固まる。

え?え??なにこの空気。


「ねェ、苗字サンはさ、今生きていて幸せ?」

「突然だね…。そうだねぇー……うーん、生きてるから幸せ、かな。」


そ、よかった。と小さく笑う顔はなんだか安心した顔だった。
「いつだったか、わからないけれど、君が行こうとしてたシェルターで死人が出たんだ」


―数え切れないほどね。

そこまで聞くと私の体が自分の意思とは別に震えた。

そういえば、この前、私が行こうとしたシェルターは確かに

使徒とかいう化物の攻撃が当たったらしく、今はその近辺は立ち入り禁止になっており

報道もされていない。だから、もしかしたら、死者が……



「君ひとりでも助かって良かったよ。」



いつの間にか飲み終えた缶をゴミ箱へと投げ捨てる。

その缶は渚くんが入れたかったであろうゴミ箱とは収まらず、

カンっと軽い音をたて道に跳ね返る。

だるそうに渚くんが腰をあげる。


「で、でも、渚くんは私と別れたあと、あのロボットに乗っていっぱい人を救ったんでしょ?すごいよねっ!」

「あれは、ロボットじゃないよ。それに僕は乗ってない。シンジくんがやったんだ」

「え?」

「僕はまだまだ邪魔者扱い。しょーがないよね。」


その手に収まった缶は入れようとしていたゴミ箱に渚くんの手で捨てられた。


「運命は変えようとしても、変わんないのかな。この缶みたいに、結局あるべき場所へと戻されンのかもね。」

「渚くんってさ、難しいこと、言うよね」

「……気まぐれだよ。色々ね。」


私の答えとは別の答えを口にし、ごちそうさまと彼は別れた。



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