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最近気づいた、というのはこれは嘘だった。
正確には『気づかされた』に近い。僕は最近名前に避けられていて少しヤケになっていたところをシンジくんに声をかけられた。
事を説明した後は大きなため息と誤解をとけ、と一言もらった。
事実、その事を名前に説明したら彼女の表情は強ばったものから柔らかくなった。
「……後は、名前がどう返事するか、だね。」
でも僕は知っている。教えてもらったんだ、シンジくんから。
『距離が離れたときがあっただろ?あのとき、苗字はお前と同じことを思っていたよ』
つまり僕と同じ気持ちなんだ。
それを思うだけで自分が自分ではないように思えて心が軽やかになる。
セカンドの弐号機に乗り込む。
彼女のかわりに今日は僕が出撃という命をさっき携帯でうけた。
今日の僕はとても気分がいい。
「渚くん!迎撃準備はいい?」
「ラジャー。」
気を抜くと鼻歌でも歌いそうだ。
目の前にいる使徒に武器を構える。攻撃をするより相手の事を見極めてからの攻撃という作戦だった。
使徒は僕に気づいたのか形状を変えて僕へとその触手を伸ばしてくる。
チェンソーを模した武器を振り、切り落とそうかと思ったがゴムのような感触で切り落とす事は出来なかった。
切りそこねた先端は僕の腕へと巻き付き何かが入り込んでくる感覚がした。
「ああああああああああああッ!!」
酷い激痛とめまい。
気持ち悪い。
異物が腕から入り込む。
血管が押し込まれ、筋肉が悲鳴をあげる。
腕を切り離さなきゃ。
『し、使徒が!身体を侵食していきます!』
『渚くん!!神経接続解除!』
「とまれ、とまれ、とまれとまれとまれ!」
プツン、とそんな音でもしたかもしれない。
目の前が暗く、闇に閉ざされる。
そこにぼんやりと浮かぶ人?
多分それは僕であり、彼女でもあり。
『どうして』
「どう、して……?」
『人と交わるのどうして』
「……好きだから。リリンとともに」
『好き?』
「好き、さ。」
『いなくなったら?』
「考えたくもないね。」
『いないよ』
「いない?」
『いない、いない、いないいないいないいない』
バッと視界が開けたと思ったら視界は揺れるものの今自分が何をしているかがわかった。
ここ、どこだ?なにをしてるんだ?
手、赤い。弐号機、赤い。
「ちょ、ちょっと待ってよ……、嘘、だろ?」
出した声はまるで自分の声じゃないようだ。かすれ、息が漏れるだけで今吐いた言葉が言葉として成っていたかがわからなかった。
ここは、……シェルターだ。
『いない。ねえ、どんな気持ち?』
「う、うぁあああああああッ!!!」
『シンクログラフ反転!使徒に侵されます!』
『強制停止は?!』
『出来ません!!信号拒絶!』
――第壱中学で被害者がでたそうよ、シンジくんの……友人じゃないかしら。
――だ、だれですか?
――苗字名前さん。使徒の手により建物破壊、圧死だったそうよ。学校近くのシェルターで。
……ああ、なんだ、僕同じ事をしているじゃないか。
僕という使徒に、エヴァの手で圧死……。
まだ君は運命の中にいたんだね。
そうしてまた僕の目の前は暗くなる。
明かりを取り戻した頃には初号機に首を絞められて息ができなくなっていた。
「……ま、た、……」
「渚ッ?!」
『……エヴァ弐号機沈黙……使徒撃破しました……。』
――……また来る明日は、どんな明日になっていたんだろう。
キラキラしたものだったろうか。僕の隣にはいつもどおり君がいるんだろうな。
(end)
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39-最終話-