プラネタリウムまでの時間があったので私たちは科学館の中をウロウロと歩き回っていた。
私も自由研究は科学にすれば良かったかな……。
図書館にいってレポートをまとめたんだけれど……。
「へェ、雷のつくり方だって。」
「人間の手で作れるのってびっくりだよね……。原理は全くわからないけれど。でもどうして雷が自分の手でできるかもしれないなんて思ったんだろう。」
「昔も今の時代も興味があるものはとことん追求したいリリンはいるんだよ。」
「リリンって、人類だったよね。そうだね……そういえば私、昔は雷って雷様が起こしてるものだと思ってたんだ。」
何も考えず取っ手を握りぐるぐると回していたのでパッと手を離すと取っ手はもう力を入れていないのに回転を続けていた。
容器の中に雲のようなものができていたけれど、無言のままだったカヲルくんの方を見ると首を傾げている状態で固まっていた。……私も同じ方向に首を傾げると彼はやっと口を開いた。
「雷様って?」
「雷様は、所謂風神雷神の雷神だね。雷様といえばおへそを取られるって話をお母さんからされてさー。稲妻が走るたびに私お腹押さえてビクビクしてたんだよ。」
「あは、安易に想像ができるよ。」
「あ、酷い!今はもう押さえないからね!」
「油断しているところをとられるかもしれないよ?」
「う……、それは怖い。でもどうしておへそなんだろう……美味しくなさそう。どうやって食べるんだろう。ステーキかな?」
「……っ。」
ひゅっと息を吸い込む音がしたと思ったらカヲルくんが顔を押さえながらそっぽを向いていた。
「……私面白い事いった?」
この仕草はカヲルくんが不意打ちをされて笑ってしまったときにする仕草。
……変なこと言ったかな?今度は私が首を傾げる番で。
「いや、多分食べる為じゃないんだろうけれど、ヘソを美味しいかなって聞かれたの初めてでさ。」
「そうだね……、私以外におへそ美味しいかなって聞いてる人聞いたことないかも……っ!まさか人類初……?!」
「ふ、くく……。」
人類初だとは思っていないけれど、カヲルくんが楽しそうだったから冗談を言ってみたら思ったよりも笑ってくれたみたいだ。
そういえばアスカちゃんの時より、綾波さんの時より笑う回数が多いかもしれない。もしかしたら私には少し心開いてるかもしれない、……なんて図々しいかな。
「あ、カヲルくん、もうすぐプラネタリウムの時間だよ。行かなきゃ。」
カヲルくんは腕につけていた腕時計をチラリを見るとそうだね、と相槌をうってくれた。
私とカヲルくんでプラネタリウムがある劇場のような場所に行くと既に人が沢山入っていて、辺りを見回して席を探していると手を誰かから掴まれた。
「こっち。」
「あ、ありがと……っ。」
カヲルくんから手を引かれ席に座る。
座った瞬間に離れそうになった彼の手をギュッと握り、離れないようにする。
彼は少し驚いた顔をした。当たり前だよね、こんなのはしたないよね。
でも今日だけは……、今日のデートだけは、お願いだから。
「始まる前まで、いいかな……。」
「構わないよ。あったかいね、名前の手。」
握り返された彼の手も暖かくてなんだか私の心をホッとさせた。
そのあとにプラネタリウムが始まって力を緩めて手を離そうとしたけれど
カヲルくんが私がやったように私の手を追いかけてきて捕まえてくれた。
びっくりして彼の顔をみたけれど周りが暗くてカヲルくんがどんな顔をしているのか見れなかった。
……プラネタリウムも終わり、外に出ると眩しく思わず顔に手を当ててしまった。
あ、手が離れちゃった。
カヲルくんは気になっていないようで腕時計を確認している。
そういえば腕時計をしているカヲルくんって初めてみたかも……。
白い腕に真っ黒の結構ゴツゴツしたデザインの腕時計。彼に映えていて、すっごくカッコイイ。
「まだ時間ある?プラネタリウム作成の材料買いに行こうと思ってるンだけれど。」
「あ、そういえばプラネタリウム作るんだったね……、忘れてた……。」
「名前が一番最初に自由研究の事忘れたら駄目って言ってたのに。」
「あ、あはは、ごめん。」
そして私はカヲルくんと一緒にアルミホイルやら工作用紙を買い、
私の両親がいなかったので私の家に行き、二人で試行錯誤する結果、ようやく形になった。といっても歪な形になってしまったけれど。
カヲルくんはできたことに満足したようで少し興奮したように電気を消して早く見たいと言い出した。
電気を消し、いざ電球をつけてみよう!
「あ、あれ……?」
「……電球じゃ光が弱いのか……。光の強さが弱いから光が拡散してしまっているのかもしれないね。」
思ったより弱い光でぼんやりと壁に映し出される星たち。
思い描いていたプラネタリウムじゃなくて少し落ち込んでいたらカヲルくんの方からボスッという鈍い音が聞こえた。
「今日、付き合ってくれたお礼。これ、君の星ね。」
「……ふふ、大きいものもらっちゃったね。」
電球の漏れる光にうっすらと照らされていたカヲルくんの顔は
私とは正反対に嬉しそうな顔をしていたから、これで良かったのかもしれない。
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