奇しくも違う意味でカヲルくんをドキドキさせることに成功した私はテントへと戻ってきた。
……ってそんなこと考えてる場合じゃなかった。
「相田くんの返事、……どうしよう。」
彼に背をむけ走り出し、答えを保留にしてしまった。
「お返事待っててください」なんて一言もなしに。
彼を傷つけたままだった。
綾波さんに迷惑をかけた件でそれどころじゃなくなっていたけれど、やっぱり返事を返さなきゃいけないよね。
でも今回の件で気づいてしまった。はっきりと。
「やっぱり私、カヲルくんが好きなんだ。どうしようもなく好き。」
好き、というたびに心にポツポツと染み渡る感覚がする。
いつの間に好きになっていたんだろう。やっぱりキスをしたいと思っていた時には
すでに恋をしていたのだろうか……?
彼に抱きしめられて、安心して、ドキドキして。
ずっとこのままで居たいと思った。
さっきまで起こっていたすべてを忘れて、カヲルくんと一緒に居たいと思っていた。
そんなことを考えていたら徐々に顔が熱を持ってきている事に気づく。
「って、違う違う!」
「何が好きで何が違うのよ。」
「ひいいい!」
一人かと思っていたらいつの間にかアスカちゃんが入口のところで体育座りしながらニヤニヤと笑いながらそこに居た。
……ぜ、全部聞かれていたらしい。
「あ、アスカちゃん、恋って難しいね……。」
「はァ?いきなり何よ……、あのスカシホモの事じゃないの?」
「うーん、そうなんだけれど、叶わない恋をするか、それともこんな自分を好きでいてくれる人に尽くすか……どうすればいいのかなって。」
「……告白でもされたの?」
「……鋭いね。」
思わず苦笑いをもらしてしまうほどだった。
アスカちゃんは誰からとは聞かず、ジッと私を見つめるとフフンと得意げに笑った。
「アンタの好きなようにやりなさい。」
「えーっ!そ、相談したつもりだったのに……。」
「何言ってんのよ、結局行動すンのは名前なのよ?後悔のない選択をしなさいよ?」
「うう……はーい……。」
そして私たちはマットを敷いて眠りについた。
次の日、私は相田くんに、告白の返事をした。
というか返事をする前に相田くんが「思うのは勝手だろ……?」といって返事を聞かなかった。それが今回の騒動の結末だった。
色々考えた結果が結構あっさりした結末を迎え、昨日の件でオーバーヒートした頭を休める為に私はぼんやりと魚釣りを楽しんでいた。
ちなみに綾波さんだけれど、あのあとすぐに体調がよくなり今日の朝、
私たちと合流した。
その際に綾波さんに謝ると、謝る必要はないなんて言われた。
時々思うけれど、たまにカヲルくんと綾波さんって似てるよなって思う。
ボーっと浮きを見ていると隣に誰かが座った気がした。
「あ、カヲルくん。」
「目の腫れ、引いたみたいだね。釣れてる?」
「あはは、私釣りの才能ないのかも。さっぱり。」
というのも餌がつけれず、実は針だけを垂らしている状態なんだよね。
これでは魚も釣れないのは当たり前なんだけれど。
少しぼんやりと考えたいと思ってたからそのまま釣り糸を垂らしていた。
「今話せる?」
「う、うん……、もしかしてこの前、私と話したいって言ってたこと?」
「そ。その話。」
神様は私にぼんやりとさせるつもりはないらしい。
チラリとカヲルくんの表情を盗み見て、そしてまた浮きを見る。
動揺しても、これならバレないはず。
きっとカヲルくんは碇くんが好きだ、だからどうやったらいいか教えて欲しいって言うはずだ。
私はなんて返そう、きっとアスカちゃんなら昨日のように欲しい答えをあげるだろうに。
そして彼の言葉を聞いたあと、私は結局、動揺を隠しきれず、彼を見つめてしまった。
「単刀直入にいうよ。君の傍にいたい。」
「…………え?」
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