理科の実験の途中、隣の人に聞いてみた。
「い、碇くんって恋とかしたことある……?」
はあ?!って感じの顔をされてしまった。
もちろんそんな顔をするのはわかるよ。突然聞かれたらそうなるよね。
でも私が真剣に聞いているので、観念したのかごにょごにょと話している。
ちなみに答えが気になっているのか、私の質問が聞こえてしまった近くの女子たちも若干ソワソワしている。
碇くん、結構人気だもんね。
「……そりゃあるけれど……、今は誰か好きってわけではないよ。……多分。」
「そ、そう……。やっぱりその子とキ、キスしたいとか、思った?」
ぶはっと吹き出しちゃった。会話を聞いていなかった同じ班の子達の目が集まる。
なんでもないと碇くんが冷静を装いながら手を振る。
「ち、小さいときだったからあんまり覚えてないけれど、今好きになったら、多分、思うと、おもうけれど……。」
「そ、そうだよね。」
理科室は教室とは違いパソコンではないのでノートを開く。
あみだくじを2本作り辿る先にLOVEとLIKEを書き込み、隠して片方にハートマークをつける。
「ねぇ、苗字、もうすぐ夏休みだけれどさ。」
「んぅ?……なんか変な声出ちゃった。えっと、夏休みがどうしたの?」
「一緒に遊びにいかない?海とか、海がダメならプールとか。花火とか、祭りとか。いっぱいイベントあるし、どうかなって。」
あみだを途中でとめて、頭の中の予定表をめくってみる。
生憎の真っ白だった。知ってたけれど……。
頷いて答えると碇くんは少し緊張がとけたような表情をした。
「楽しみだね。みんなにも予定聞かなきゃね。」
「……そうだな……、アスカには家に帰れば聞けるから僕はトウジとかに聞いてみるよ。」
「じゃあ私仲の良い女子たちに話してみるね。」
綾波さんともっと仲良くなるチャンスだと思い、彼女の方を見てみたら黙々と実験をしていて、その隣でカヲルくんがちょっかいをかけているみたい。
うーん……、カヲルくん、綾波さんから無視されてる……。
「そういえば、なんで恋愛事聞いてきたの?」
「最近……、多分、好きじゃないかっていう人ができたの。」
「そ、それってクラスメイト……?」
「うん……、えっと、仲の良い人。だから今回誘ってもらったらひと夏の恋ができるんだね!」
「いや、多分間違った使い方してるけれどな……。」
あれ?そうなの?
教えてくれるかなって思ったけれど、碇くんはまあいいやといって実験にもどった。
手元を見てみるとあみだくじから脱線した線が。
LOVEでもLIKEでもなんでもいいか、好きに変わりはないし、
悪い気分じゃないから。
そう思い脱線した線の先に「青春」と書き足した。
我ながらちょっと恥ずかしかった。
そういえば夏休みか……。
理科室に貼られたカレンダーを見るとあと一週間もせずに
夏休みの日がやってくるのが確認できた。
楽しみだと思っていたらそんな夏休みがすぐにやってきた。
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