渚くんは転校生である。
2年にあがる時に転校してきた彼はみんなの注目の的だった。
顔はいいし、誰にでも態度をかえず(先生にも)接し、ミステリアスな雰囲気をもつ
彼だから。
かくいう私も彼のアッシュグレイの髪に射抜かれそうな瞳に胸がときめいたもの。
でも、話す話題もなく、碇くんと一緒にいることが多かったから話しかけることも難しかった。
「あー!シンジくんだ!僕だよ!フィフスのカヲル!ほら、この前本部であったろ?!」
って感じの挨拶を転校初日にしていたから、エヴァパイロットというのは皆知っている。
(というかこういうのって言っていいものなの?)
だから碇くんと仲良く話しているときは皆遠巻きで見ている。
そして昨日、日直当番が一緒になったとき。
傾き始めた日に照らされる教室を掃除していたら、いきなり渚くんから腕を掴まれ、
「走って!」と共に私たちは駆け出した。
……今思うと、あの化物がくることを予測していたみたいな……考え過ぎかな?
考えているとあの射抜かれそうな目とあう。
「ねェ…えっと、誰だっけ?」
話しかけてそれはないんじゃないかというセリフ。
て、そういえば私、自己紹介してなかった。
「苗字、名前」
「苗字サンは、昨日あのあと、ちゃんと帰れた?」
思わず聞き返そうになってしまった……
イケメンって気遣いもできるんだ…!
「あ、う、うん!えっと、あ、ありがとう…」
「?」
またあのキョトン顔をされてしまった。何かへんな事いったかな…
「リリンってさ、よく、面白いタイミングで謝罪の言葉と感謝の言葉をいうよね?どうして?君のありがとうの意味もよくわからないんだけれど。」
今度はこっちがキョトンとなる番だった。
まず…
「り、りりんって何?」
「君たち人類の事」
「え、渚くんだって人類でしょ……?」
「僕?僕は似てるようで違うよ。ていうかさ、さっき言ってたありがとうの意味教えてよ」
なんだか子どもから詰め寄られてる気分になった。いや、私も子どもだけれどさ!
意味、意味…なんだろう…うーん…あんまり考えて言ってなかったからなぁ…
「今のは、心配してくれて、『ありがとう』かな。うん、やっぱりこれが一番しっくりくる」
「ふーん…、そんなことまでありがとうって言うんだね。真面目だね」
「まじ…めかな?普通じゃない?」
「僕、普通の基準がわからないや」
「そう、言われるとそうだね…普通って個人基準だよね…」
なんか複雑だね、と笑うと渚くんは
「昨日の顔より今の君の方が好感が持てるよ」と
へらっとした笑い方で彼は碇くんのもとへと帰っていった。
……イケメンだ。
02