さて、困りました。
「寝る場所どうしよう……。」
お父さんのところでもいいんだろうけれど、なんだか悪い気がするし、
かといっておかあさんのところはちょっと……
私のところは論外だし……。お部屋片付けてないからね。
「別にソファでいいよ。僕が急に来たんだし。」
「ごめんね……、今度来るときはちゃんと用意しておくね……。」
「え?また泊まりに来ていいの?」
私なんてこと言ってるんだ!!
バッと口を塞いでも出した言葉は戻ってこない。
嬉しそうに聞いてくるものだからダメとは言えない。
「一応僕らは未成年の男と女だ。間違いがあってはいけないからね。
簡単に君の家に泊まりにこれないというのはわかっているつもりだよ。」
「ご、ごめんね……」
やっぱりカヲルくんって男の子なんだなって再確認。
そういったこと考えるんだなって思うと、私がさっきキスしたいって思ったことは
普通なのかなって思えてきた。
「じゃあ、もう遅いし寝ようか?」
「そうだね、そっちの部屋で寝るの?」
「う、うん。明日は朝が早いけれど起きれる?」
「問題ないよ。寝床ありがと、おやすみ。」
そういって私は部屋に戻る。
ドアを閉じて電気を消して布団にはいるものの、やっぱりなんだかカヲルくんが隣の部屋にいるということにソワソワとした気分になり、寝れなくなる。
「ね、ねえ、カヲルくん、寝ちゃった?」
「まだ起きてるよ。」
そこまで分厚くない壁に向かって少し声をあげて話しかけるとすぐに返事が返ってきた。
何を話す、ということはないんだけれど何だか話していないと寝れない気がして。
「今更だけれど、テスト勉強の場所、私の家でよかったの?」
「友達の家に来れるきっかけだったし、僕は良かったと思うよ。」
「勉強、はかどった?」
「うん。やっぱり名前の教え方はうまいよ。」
「私もカヲルくんに教わったところ、すごくわかりやすかったよ!」
すると一瞬の間があり、「ねえ」とすごく近くで声が聞こえた気がした。
焦り起き上がったけれど、ドアが開いているわけじゃない。
……じゃあ、まさか……
「もっと近くで話したい。ちょっと眠れないからさ、少し話そうよ。」
なんて、声がドアの前から。多分、そこに立っている。
部屋は暗いけれど……、どうしよう……。暗いからあまり見えないよね……。
「……少しだけなら。」
かちゃ、と音と共に顔を覗かせるカヲルくん。途端に少し明るくなる。
隣の部屋は大きな窓があるから外の明かりが漏れたんだろう。
「別にやましいことしないから」
「そう言われると逆に身構えてしまうからやめてほしいな……」
苦笑いしていたらカヲルくんが歩いてきてベッドの横へと座り込んだ。
ドアが勝手に少し閉まり、暗闇がまた戻る。座り込んだあとはちょっとした無言タイム。
何を話そうかな、なんて思っていたらカヲルくんがこちらを向いた音がした。
「ねェ、名前を触りたいって思うことは普通なのかな?」
「はい?!」
裏返った声を出してしまった。日付も変わりそうなこんな時間に
叫んでしまったことにまた口を押さえる。
今の言葉を脳内でリピート。
触りたいって、どこを、どうやって……?
自分で考えておいて恥ずかしくなる。なんてはしたない……。
「あ、別に性的な意味じゃないんだ。やっぱり僕は君とは近い距離で居たいみたいなんだよね。」
「う、うん…なんかほっとしたような」
残念な様な……なんて口には出さない。
なんだ、私、やっぱりそうなんだ。
「カヲルくん、触りたいって思うのは多分、人間の性なんじゃないかな。
異性だけじゃなくて同性でもそうだよ。近くにいてほしい、安心するとか。そういった心の安定を他人に求めてしまうんじゃないかな。
カヲルくんにとって、光栄なことにそれが私だったって……感じなのかな?」
「……そっか、……じゃあ、手を繋いでいい?」
「……うん。」
そうして私達は暗い中、お互いの手を探り、握りあい、そして喋っていたらいつの間にか眠ってしまっていた。
学校について、私は彼女に聞いてみました。
「アスカちゃん、やっぱりキスしたいって思うことは好きって気持ちなのかな?」
「ぎゃーッ!純白だった名前が汚れたあああ!!!」
何故か叫ばれました。
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