待ち合わせの時間。
昨日、やっと携帯に少し慣れてきたらしくメールがきた。
『明日は13時で』
ただ、それだけの簡単なメールだけれど、実は初メールだったり。
明日のデートということと、そのメールも嬉しくなってすごく浮かれてしまい
ものすごく早く着きすぎてしまった。
「一時間も早くついてしまった……私のバカ…」
お店のウインドウに写る自分で前髪を整えたり、服がおかしくないか何度も位置調整していたけれど、
やはり一時間を潰すにはいたらなかった。
しょうがなく喫茶店にでも、といきたいところだけれど、喫茶店なんて一人で入ったこともないし、
もしこれがデートならば喫茶店にいくかもしれないし……
というか、これはデートと思っていいんだよね…?
相手はカヲルくんだよ……?あんなカッコイイ人がデートに誘ってくれるなんて…
なんて思っていたらウインドウに写っている自分の顔がドンドン赤くなっていく。
少し顔を冷やすためにパタパタと手で顔を扇ぎながらとりあえず近くの雑貨屋に入る。
そういえばカヲルくんに何かあげようかな…とフラフラと見て回り、一つ買い物をした。
途中、占いをしてもらうところがあったので500円を払い占ってもらったのだけれど、
「未来が見えない」といってお金を返されてしまった……。
「結構広いなあ…、全部見るのは大変そ、わっ!」
手に持っていた携帯がいきなり震えだして急いで電話に出ると少し息切れが聞こえた。
ま、まさか…これが噂に聞く変態さん……!?
「ごめ、遅くなって…、今どこにいるの…?」
「か、カヲルくん?!あ、ゴメン!今近くの雑貨屋さんにいて…!」
「雑貨……?ああ、じゃあ、ちょうどいいや。待ち合わせ場所の前にあるところだよね」
「そう、そこだけれど…こっちに来るの?」
「うん、買いたいものがあるからね。」
そういって5、6分後くらいには合流ができた。
少し汗を拭って、改めて謝ってもらった。
「今日、服なんだかいつもと違うね。雰囲気違うから一瞬誰かわかんなかったよ。」
「そ、そう…?」
「うん。あ、そうだ。今日さ、付き合ってもらったのはね、シンジくんの誕生日プレゼントを一緒に選んで欲しかったんだ。」
服装、可愛いっていってくれるかな、って思ったけれどちょっと残念。
でも気づいてもらえただけでもいっか…
……あれ?碇くんの誕生日プレゼントを選ぶ……?
もしかして、これってデートではなく……?
「…?どうしたの?なんか絶望したって感じの顔をしてるよ?」
「イエ、なんでもありません……でもそれだったら男子…、例えば鈴原くんとか相田くんとかの方が良かったんじゃない?」
「二人には聞いたんだよ……、なんかこれホントに必要なの?っていうものを言われたよ。なんか女性の水着の写真がいっぱいのってるやつとか」
「……女子には必要ないものだね。もっと実用性があるものにしようか…日用雑貨とか。ほら、碇くん料理してるし料理器具とか」
「なるほど…やっぱりそういうのは女子の意見が参考になるね。それに名前はわかりやすく教えてくれる。君はホント名前センセだよ。」
「あはは、懐かしいね、それ。じゃあ、見に行こうか、確かあっちにあったはず……」
調理器具が置いてあるところにやってきた。普段、調理場に立たない私でも
こういったオレンジ、イエロー、ピンクと色鮮やかなものが並んでいると
いつか使うかもしれない、可愛いし多機能だし買っちゃおうかな、って思ってしまう。
マジマジとカヲルくんも見ているけれど、結局料理はさっぱりらしく
どんなのがいいかを商品を持って来ながら聞いてきた。
「これは?」
「カヲルくん…それ金額がびっくりするんだけれど…。機能も重要だけれど、使いやすさとか必要さとか、あと、お金は無理しない程度だよ?相手の人がお返しがキツくなっちゃうからね。」
「そんなものなんだね。了解。じゃあこれは?」
「面白い形にする目玉焼きのだね…うーん…必要かな…碇くんレベルならその形出来そうな気がする…。」
「……確かにね。ここ最近セカンドのお弁当とシンジくんのお弁当がどんどん豪華になっていってる気がするよ。あ、じゃあこれはどうだい?」
「え……あ、これいいね。お弁当のおかずを作るのとかにつかえそうだよね。これにしよっか、金額もお手ごろだし」
「よし、じゃあ僕お会計してくるから出口のところで待ってて?」
「わかった、待ってるね」
そういって一旦別れ、私は外に出る。
日差しがお昼、ということもあって少し強くなっている。
6月ということもあるのか蒸し暑く、まとわりつくような暑さにすぐに汗が滲んでくる。
帽子持ってくればよかったかな…と思いながら、ふと出口をみると
なんだか焦りながらカヲルくんが出てきた。
どうしたんだろう?と首をかしげていたら、なにやってるのさ、と少し不機嫌そうにいわれた。
「出口の外なんて暑いに決まってるだろう?熱中症になったらどうすンのさ…」
「あ、そういう事…あは、気付かなかった…」
「ちょっと歩こう?あそこの公園までさ」
返事をして二人して歩く。
私はカヲルくんの一歩後ろ。彼はスタスタと置いていくことはなく
私の歩くスピードに合わせて歩いてくれているみたい。
昔のカヲルくんだったらきっと遥か彼方に行っていただろう。
で、後ろ向いたら「あれ?なんでそんなに遅いの?」なんて聞いてきそう。
「何笑ってるの?」
「え、私笑ってた?」
「うん、目が笑ってる。そこのベンチ座ってて。」
両手で笑っていた顔を押さえて無理やりいつもの顔にして、言われた通りにベンチに座る。
なんだかカヲルくんとベンチに座ることが多いなぁ……
彼は近くのコンビニに入っていった。
すぐに出てきて私の前に立つとコンビニの袋の方からアイスの袋を私に差し出した。
「え?」
「付き合わせたお礼。あとコレも。さっきの雑貨のトコで見つけたから」
コンビニとは別の袋から出てきたのはお菓子をかたどった文具セットだった。
「え?!もらっていいの?!」
「一応、必要性と女子らしさを重視したんだけれど」
「わ、ありがと…!あ、私も買ったんだ、これ…!」
「キーホルダー……?それも黒ネコの。」
「うん、なんか、可愛いものだけれど、なんだか、そういうイメージがあって…あ!あの、必要ないなら捨てていいから!」
「なんで必要がなかったら捨てるのさ、友達からもらったのに必要ないわけないだろ…?」
顔の高さまで持ち上げているカヲルくんの顔は本当に嬉しそうで。
よかった、喜んでもらえて。私ももらっちゃったし……
アイスが溶けるから早く食べよう、とカヲルくんが隣に座った。
「そういえば運動会、赤団は残念だったね。せっかくファーストと名前は一位とったのにね」
「そうだね…」
………あれ?なんだか少しの違和感。
喋ってる事は普通だし、周りが何か変わったわけでもない。
じゃあ、なんだろう、なんだか少し、
そう思って私は下を向いたら気づいてしまった。
カヲルくんとのベンチでの距離が
拳一個分じゃなくなってることを。
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