育成計画 | ナノ
彼とは初対面である。

初対面というか、喋ったことはない。


私の腕を掴み、目の前を走る銀の髪を必死に追いかける。

足がもつれても気にしていないのか無理やり引っ張り、また走らされる。


警告音があたりに鳴り響き、事態の重さがわかった。


「あ、あの……ッ、化けものが来るよ……!ねぇ!あなた…!」

「知ってるよ、だから行くんでしょ。」

「でもシェルターは…」

「あそこは」


彼の言葉を遮る様に爆発音が響くと思わず大きい音に耳を塞いでしまう。


転校生は私の方を振り返り目で何かを伝えようとしていた。

耳を塞いでいた手を下ろすとはっきりとした声で

「危ないから」


彼が見ていたのはどこだったんだろうか。





ぜえはあと呼吸をしている私に比べ、息切れ一つしてない彼。

なんでこんなちょっと離れたシェルターに来たんだろう…


「ね、えっと、あなたは、」
「カヲルだよ。渚カヲル」


名前を聞いたわけではないけれど…


「あの、渚くんはなんで、…私をこのシェルターに、つれてきたの?」


きょとん、という顔をすると首をひねり「なんでだろね?」と答えた。

なんだろう、この人変な人。


でも最後に一言、「知ってた気がしたから」と私を見ずにいった。



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