育成計画 | ナノ
予定の1時になると歓迎会が開始された。

私の席からは今日の主役の席は遠く話すにはちょっと難しそうだった。

これをきっかけに渚くんとはもっと話してみたいとも思ってたけれど、しょうがないよね。

それにしても……

「い、碇くんのご飯すっごく美味しそう……」

生唾を飲み込む。目の前に並ぶ料理は家庭の味というものもあれば、フルコースの料理ですか?と訪ねたいくらいの料理も置いてある。

皆で集めた少しのお金でこんないっぱい作れるものなの…?

碇くんの女子力というものをみせてもらった気がする……、それで、お味は……


「す、すごい!柔らかい!しっかり味が付いてる!料理で感動したの初めてだよ…っ!」

「あ、ありがと。そんなに褒めてもらえるとは思わなかったよ…」

「いいお嫁さんになるね!私、好みのタイプに料理の出来る人を追加したいくらい!」

「それ、なんか素直に喜べないなぁ……」

これなら渚くんがお婿さんで碇くんがお嫁さんならいい家庭をつくれるね。良かったね、渚くん、ご家庭は安泰だよ。

斜め前に座っていた碇くんはみんなが絶賛しながらご飯を食べているから恥ずかしくて、居づらそうに目線を左右に動かしている。

そのショットを、隣の相田くんが写真に収めてて、なんか、相田くんもグラビア撮影してる人みたい。
「いいよ〜、いいよ〜、その表情いいよ〜」なんて言ってそう。

「……シンジの写真は女子に人気なんだよな」

―聞かなかったことにしよう。

「はい、苗字も。笑って?」

カメラをこちらに向けられて少し緊張して背筋を伸ばす。
「そんな固くなんなよー、ほら、リラックスリラックス〜」

と、言われても、カメラはなれないもので…。ちょっとだけ笑ってその瞬間を撮ってもらった。



その後、ビンゴ大会とか(景品はお金がかからないという理由と女子達の団結力で渚くんのアドレスという事だったけれど、多分返信まだできないんじゃないかな)、
じゃんけん大会とか(こっちは渚くんと全員との対決で最後まで負けた人が渚くんのいうことを一つなんでも聞くという事だった。ちなみに負けた人は宿題を変わってもらうという事で決着した)
色んな事したけれど……


一向に渚くんと話せる機会が訪れませんでした。





「はーい、みんなー、これ現像〜。一枚一枚に番号がふってあるから欲しい人は番号かいて俺に渡してねー。1枚30円で販売だよー、はい、回してって。」

そういって次の朝、相田くんが持ってきたのは昨日の歓迎会の写真だった。

私の席に回ってきたのは2時間目の授業中だった。


(えっと……なんかいい写真ばっかりだなぁ…)

少しばかり、綾波さんや惣流さんや碇くんや渚くんの写真多くない……?

相田くん、こういうところでお小遣い貯めてるのかな…。じゃあちょっとだけ貢献しようかな、と思い私がうつってる写真と4人の好きな写真の番号を書き写す。

(30円かけるこの枚数だと…わ、結構お小遣い使っちゃうなぁ……うーん、これを抜いて…よし)

先生が背中を向けている間に後ろの人にまわす。

出来上がりが楽しみだなー♪

ああいったクラスの皆でわいわいと騒いだのは初めてだったのでつい、いっぱい写真を購入してしまった。



次の日、作業が早いのか相田くんが全員に写真を配っていた。

「ほい、苗字の」

「ありがとう、早いね…ってわあ!なんで渚くんの写真が一番最初なの…?!」

「え、苗字って渚のこと好きなんだろう?だから喜ぶかなって」

「違うよ!!だって皆の写真も買ってたじゃん!惣流さんのとか!」

「え、惣流が好きなの?言ってくれればいいのに」

「もー!!違うー!!」


机をバシバシとやっていると「わ、怖!」と言って相田くんは次の人の所に走っていった。
惣流さんが近くに居たら絶対、ドン引きされてた。よかった、教室にいなくて。

写真に目を落とす。興味なさそうに明後日を向いて飲み物を飲んでる渚くん。

(楽しく、なかったのかな……?)

私がもらった写真にちょこちょこ写っている渚くんは、
どの写真にもにこりとも笑っていない姿が写し出されてる。

そういえばビンゴ大会もじゃんけん大会の時も…、そもそも今まで
大きく笑ったところと聞いた事がないな。

一番最初に写真を戻して、じっと見つめた。

当たり前だけれど、やっぱり無表情でコップに口をつける彼は笑わなかった。



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