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※14巻発売以前に、即興二次創作小説トレーニングで「腐った潮風」をお題に書いたものです。流血、殺人表現注意



潮の匂いが漂っていた、ような気がする。
打ち寄せる波の音は昔に聞いたものと変わらなくて、おれは、海にいきたいなと思った。暑い日差しと、それにきらめく水面が脳裏に浮かぶ。頭の中で、誰ともしれない人々がはしゃいでいる声が聞こえる。海で泳いでいた中の一人がこちらを振り向いて、手を振る。こっちにおいでと呼んでいる。
目の前に転がっているのは、近界民だったものだ。換装が解けていたのにも関わらずこちらへ向かってきて、おれはそれに向かって反射的にアステロイドを放った。そしてそれは近界民の体をやすやすと貫いて、穴ぼこにした。その穴から漏れだしたのはトリオンではなく液体で、そこでおれはやっと、その近界民が換装していなかったのだということに思い至った。
近界民の血は赤かった。おれたちと何ら変わりのない、赤くて、鉄の匂いがする液体。ときおり照らすサーチライトの光と、月のような大きな丸い惑星の光で、にぶく光っていた。
この砂浜にはいずれ潮が満ちる。今日は潮が引いているだけで、いつもはそこそこの深さの海に満ちていることを、事前に聞いていた。この近界民はこのまま誰にも発見されなければ、波にさらわれていってしまうのだろう。
キン、と耳鳴りがして、どこかで、誰かが、こっちにおいでと呼んでいる。
しかしそれは、入ってきた通信を境に、途切れた。
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