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例えば、昨日宿題が全部終わらなかったことだとか、提出物を忘れただとか、小テストの範囲を間違えただとか、そういう細々した失敗や後悔は、覚えていないほどしてきた。遊泳禁止の川で泳いで溺れかけたり、自転車で飛び出した先からトラックが出てきたり、登った木から落たり、一歩間違えば死んでいただろうということもある。だが、過去に戻ってやり直したいと思うことはない。どんな失敗も後悔も、一応は全部乗り越えてきたのだから。それが、いまの自分を作っているのだとも言えるのだから。今度同じことが起こった時に、同じ失敗や後悔を繰り返さないこと。それこそがやり直すよりも簡単で現実的な報復であり、贖罪だと思っている。
だから、俺は、

「秋山小出身、」

声変わりの済んでいない高い声。こちらを見つめる青い瞳には期待が滲んでいる。記憶よりも随分小さな身体。短い前髪。丸い頭。
及川を追い詰めた、天才。
心臓がいやに早く鼓動をたてる。汗がじんわりと背筋に浮かんでくる。口の中が乾く。おかしなほどの緊張だった。
俺は、知っている。こいつの"これから"を。
視線を及川に向ければ、特になんの感慨もないといったようににこにこと笑顔を浮かべていた。まだ、こいつらにはなにもない。

「影山飛雄です。バレーは小2からです。」

もう二度と味わいたくなんて、繰り返したくなんてなかったのに。
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