黒猫徒然


シンデレラ〜小話
2016/03/04 19:35

予定日をやや過ぎて、第二子を出産した夕陽は、生まれた娘が義母によく似ていることを無邪気に喜んだ。
外国人である珪祥の母は、華やかな雰囲気の美女で父は未だに妻を熱愛している。
二人の兄の子らは皆男子で、母や義姉らは夕陽が女子を産むことを期待していたが、念願叶って大喜びしていた。
珪花、と名付けた娘が退院すると母や義姉らは毎日のように顔を見に来た。
長兄の妻である美乎は身体が弱く、外出もままならないが、同じ敷地内の別邸から、珪祥らの家族の住む別邸ほどならメイドを伴ってよく訪ねてくる。
手芸の得てな義姉は、珪花に帽子や靴下などを作ってくれ夕陽も喜んでいる。
義姉らは問題ない。問題は、初の女子の孫に恵まれた、母だ。
夕陽と子供らと外出し、帰宅した珪祥は出迎えたメイドが、珪花の部屋に荷物を運んだと聞くなり、腕に抱き上げていた珪明ごと娘の部屋に急いだ。
扉を開け、子供部屋にしては広すぎる室内に山と積まれたベビー用品の数々に珪祥はため息を吐いた。


「パパ、ばあばかな?」


珪明も見慣れたもので珪祥の腕のなかから尋ねる。
珪明が誕生したときも、母は久々に生まれた孫に山のような玩具と服を与えたが、珪花はその比ではない。
タイミングよく、本邸の母から夕陽に一緒にお茶を飲まないかと誘いがあり、珪祥もついていった。
本邸には、兄夫婦もおり、多忙な父も珍しく在宅していた。


「珪花、おいで」


年齢を重ね、千寿家当主としての貫禄と威厳のある父は、夕陽に抱かれていた珪花に目を細め、腕を伸ばす。
寝息をたてている珪花を義父の腕に預けた夕陽は、まとわりつく息子の髪を撫でる。


「美乎、夕陽、おいしいケーキを、あら、英祥、珪祥、いたの?」


若い頃はモデルや女優のスカウトが絶えなかったという、美貌の母は実の息子らになんだ、いたのか、と言わんばかりに目を丸くした。
夫の腕にいる孫を見るなり、珪花!と駆け寄り本当に可愛いわね、と夫と顔を見合わせる。


「珪花は君に似ているね、レイラ。とても可愛らしいよ」


「祥もそう思う?でも珪花は私よりももっとかわいいわ。夕陽の子ですもの、おしとやかないい子になると思わない?私はお転婆だったのよ」


両親のなかむつまじい姿は、子としてみれば申し分ない。母の言葉にも同意する。だが、珪祥にはどうしても言わなくてはならないことがあった。


「母さん、珪花の部屋にまた、買い込んだものを置きましたね。あんなに買ってどうするんです」


珪花が誕生してからというもの、元々買い物好きだった母は、物の置き場に困るほど服やら玩具の類いを買い込んでは珪花に与えている。
珪祥は何度も苦言を呈しているが、母は気にとめる様子もなく次々と買い込む。
夕陽は流石になにも言えないようだが、幼い赤子相手にこれでは、成長してからが末恐ろしい。その内店ごと買い上げそうだ。


「あら、だって。最近の女の子用のベビー用品はどれも可愛らしいのよ。私は女の子もののベビー用品を買うのは初めてなんだもの。あれこれ目移りしてしまって。そうしたら祥が、全部買えばいいと言ってくれたものだから」


「父さん、助長させてどうするんですか」


「どう、と言われてもなあ。私も珪花が可愛いし、レイラにねだられると断れないのはお前も知っているだろう。その内お前も娘や息子のものになら糸目もつけずに買い込むんじゃないか?」


義姉と和やかに談笑していた英祥が、笑いながら会話に入ってきた。


「それは言えてるな、父さん。お前、珪花にパパ、あれが欲しいとねだられて断れるか?珪明にもだ」


「・・・・俺は子供たちを甘やかすつもりはありません。我儘で聞き分けのない子になったらどうするんですか」


「安心しろ、それはない。お前みたいに欠陥だらけの父親だけなら心配だが、夕陽さんがいるんだ。お前を反面教師に、常識のある子に育つだろうよ」


「それは兄さんにもいえるでしょう?」


父と兄が笑い、母と義姉、夕陽は声を出さずに笑った。






中途半端ですが、これにておしまいです。
後年、珪祥は娘に、パパ、私剣山が欲しい!とおねだりされ、何故剣山?と悩みながらもプレゼントします。
作中では触れていませんが、美乎や夕陽は華道を趣味にしています。その影響で珪花も華道を習い、夢中になる予定です。




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