イナイレ夢的な | ナノ






「凍てつく闇の冷たさを!」



彼の言葉に俺の心は捉えられたかのように凍りついた、まるで彼の手の内で小さく蠢いてベンチから遠いのに直ぐ傍にいるみたいで。
だけど彼が見ているのはいつだって幼馴染の円堂で、俺がグラウンドに入る頃にはいつも試合終了のホイッスル。
監督はいつでも俺を頼って最後の最後、それも勝てるか勝てないかの瀬戸際ぎりぎりに俺を呼ぶ、だから誰の気持ちも同じ思いもあいつらとは分かり合えなくて一人蚊帳の外に放り出された捨て犬扱い。
一つのボールを取り合ってみんなで分かち合う楽しさを知らない俺を彼だけは救ってくれるんだと錯覚が起きる、否、起きたんだ。
俺の心臓が掬(救)われた。
ぞくっと背筋に冷たいあの技の名残が走る、試合が終わる頃俺は無我夢中になって円堂達の元から姿を消していた。
特に誰も俺に気付いていない、俺を気に掛ける事なんてない、いつもフィールドにいたあいつらが羨ましくて力が欲しくて俺は、なんの手がかりもない彼をどこまでも探し続けたんだ。


たどり着いたのはお日さま園という一つの施設だった。



「ここ…なんで…」



誰もいないんだ?
走り続けて荒かった息が知らず知らずひゅっと飲み込んでいた、からからの咽に渇いた息が冷たく通るのは彼を見た衝動と全く同じ感覚。
人の気配なんて感じないその場所に風汰は恐る恐る足を踏み入れる、ざくざくと草を踏み分ける音にじゃりじゃりと石の擦れ違う音、空間と化したそこには一人の青年の呼吸とそんな効果音しか音を立てなかった。
壁を伝っていくといくつかのサッカーボールの当たった跡や沢山の落書きを見つけた、なぞる様にそれを見ていくと少しずつ遊具が見えてくる。
少し焦ってか風汰がそこへ駆け足で向かった時一つの声が聞こえた。



「私は、何を…」



見つけた。
そこにいたのは先程円堂と蹴り合っていたダイヤモンドダストのキャプテン。
不機嫌なのかがしがしと前髪を手で流している、強く荒々しく前髪はぼさぼさだ、しかしそれを風汰はただただ見守ることしか出来なかった。
それすらも、ただ愛しく見えるだけ。
どくんと何かが弾ける音がした気がした、風汰は静かに彼に近づこうとしたが足が動かないのかたらりと額から汗を流すのみ。
そこに髪の赤い一人の少年が現れる、泣いてしまいそうな彼を少年はなにかを呟いて強く抱きしめた。
聞こえてくるのは「ごめんね」の言葉。
その時だった、誰かに肩を引かれたのは。



「てめぇ、ここで何してる」


「あんたは…」



見たことある、この紅蓮の髪色、特徴的な髪型、金色に輝く瞳。
しまったといわんばかりの表情を浮かべごくりと咽が唸った、しかし時既に遅し壁に追い詰められた風汰、目の前の少年は小さな声で話しかけてくる。
ここで見たことは誰にも言うな。
脅しでもなんでもないと感じられたのはきっと初めてだ、彼の言葉に殺気など感じられず只伝わるのはSOSのサイン。
今この愚かな戦いを終わらせてくれ、なんて宇宙人が言うとは思えない、それなのに何も言えなくなった風汰はくすっと笑いかける。
彼の気持ちに答えようとした、ただそれだけだった。



「俺知ってるぜ、あんた風介を追いかけてきたんだろ」


「風介?」


「ああ、あいつ、ガゼルって名乗らされてる奴だよ」


「風介か、いい名前だな」


「随分お気に入りだな、紹介してやるからこいよ」


「え、」


「だって態々追いかけてきておいて偵察とかじゃねえだろ、お前の目がそう言ってる」



出会うことがこんなにも簡単で仲良くなることがこんなにも嬉しい事とはいつから忘れていたんだろう。
少年南雲晴矢の言う彼涼野風介に、俺は緊張しながらも近寄ることが出来た。
今日新たに三人の友達が出来たこと、円堂はなんて言ってくれるかな。


この後あいつらを裏切ることになるなんて、俺は思いもしなかったんだ。
ただこいつらの話を聞いて力が欲しくなった、強くなりたかった、円堂の様な強さに風丸の様な速さが欲しかった。


ちくりと突き刺さる罪悪感を蹴飛ばしてどしっと構える強欲な気持ちが風汰を支配した頃彼は、風丸と共にダークエンペラーズの一員となっていた。
それを切なそうに見つめる涼しい顔した少年は静かに涙を流している。
私と同じ、か。
木陰から冷たい風が吹いた瞬間冷たく氷漬けにされていた風汰の心臓は正真正銘の凍てつく闇に支配されていたのを今は知らない。
暖かい氷が消えた今、ただただ嫉妬が風汰を動かしているだけだった。





I wonder if you remember that day.
(君はあの日を覚えているだろうか。)


(今の君は私の好きな)
(緋月風汰なんかじゃ…ない)
(出会ったあの頃に)
(戻ってくれないか)
(あの衝撃的な告白と共に)











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あれ、英語、合ってるかな。


あまり夢っぽくしないで行こうと思っていたらしっとりしすぎてしまいました。
というか思春期とかきちがいとか書きたいのに書けない現実をどうにかしてくれ。





(風羅)

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