イナイレ夢的な | ナノ






「やあお帰り、随分と苛立っているね、ヒ……………いいや、今はグランか」


「いたのかウィン」



つれないね、嘗て家族だった者同士じゃないか。
黒いサッカーボールの所々がオレンジに輝くとその小さなボールに平然と立っていた少女、ウィンが静かに赤く逆立った髪のグランの前へと降り立った。
どす、嫌な音が響くグラウンドにはたった二人だけ、ウィンがじっとグランを見つめているとハードな練習で汗をかきタオルで拭っていたグランがそっと問いかけた。



「マスターランクを仕切る貴方が一体なんのようだい?ユートピアのキャプテン」


「、そんな言い方はないんじゃないか?」


「ふん、昔の馴染みだからとでも言いたい?それなら残念。あの頃のオレたちはもういない、友達ごっこも家族ごっこもお仕舞いさ」



そうだな、と納得して小さく息を吐くウィン。
改めて呼吸を整えてグランへ向き直り嫌に口角を上げ笑いながら「無様だね」と投げる。
その言葉にぴくりと反応を見せるグランが瞳だけでウィンを睨み何が言いたいのかと催促、それを察してか否か判った様に彼女は言葉を続けた。
彼グランからは黒く染まった炎が、彼女ウィンからは忌々しい風が纏っている。



「君の部下は、教育がなっていない」


「それはどういうことかな」


「レーゼが、追放されただろう」


「、ああそうだね、いや…そうですね指揮官」



ぐっと喉の熱くなる感覚、それを悟られない様ウィンは続けた。
そうそもそもグランの父への執着心が父上をそうさせた、と。
グランが小さく睨んでいた瞳を殺気に溢れた色合いで見せ付けてくる、ずんと居た堪れない気持ちをも抑え知らない振りしてやれやれと溜息をひとつ。


ウィンはどうしてこうなったかなんて判っている、しかしそれを行動に移すことが出来ないのはつまりそういうことだ。
逆らってしまったら自分も追放、しかしレーゼ基リュウジの事が気にかかって仕方が無い、だから彼女は態と嫌気のさす笑顔でこの話を切り出したのだ。



「君になにがわかるんだい、一番父さんの傍にいておいて父の考えを否定?」


「いいや違う、否定なんかしていない」


「ならレーゼなんてもうどうでもいいこと、彼は追放されたんだからね」



判っていて判っていない。
突然あの日から全てが狂いだした、みんな口調も立場もあまつさえ関わりすらも改めてしまった。
笑顔で溢れ太陽に見守られた頃の自分達はいない、それを判っているから二人の行動はこうもやり過ごすことができるのだ。
自分が長(おさ)としてこの三つを纏める。
裏でどうにかいい方向へ持っていけないかと一人が頑張っている、それには気付かれてはいけない。
判っているからこうして相手を簡単に挑発できる。



「ああ可哀想なレーゼ、グランに見捨てられ一人あの場所へ帰っていった」


「………」


「あの場所、お日さま園に…」



シュン…───ドゴォンッ。
己の頬を何かが激しく通り過ぎる、ぞくっと背筋に嫌な汗を流しながらも「あらら」と何も思っていないふり。
それが父上の命でありポーカーフェイスでいることが自分の存在理由。
血の気が多いね。
呟いた途端グランはあの素早さでウィンに近づいた、近く近く、息が交わり鼻の先がぶつかり合い、視線が絡み合う。
それと同時にウィンに何か熱いものが目頭へと込みあがる、嗚呼目が痛い、いつから泣いていないんだっけ。
ぐっと堪える表情が出てしまうとグランもふっと微笑んだ。



「ここでは見られてしまう、さぁオレの部屋へ行こう」



今ならまだ間に合うよその涙、と、グランはあのヒロトとして続けてくれた。
存在していた、彼はずっと彼の中に。
ウィンは嬉しさからか罪悪感からか小さく頷いてその場をあとにした。








「さ、話してご覧」



彼の優しさに錯覚を起こす前に彼女はふいと顔を背けた。
言ってしまったら上に伝えられ今までの努力が水の泡となる、そう思ったのだ。
しかしそれを彼は許してくれない、特別な感情を抱いているからかグランは髪を通常に戻し背かれているウィンの顔の頬に手をやり優しく包み込む。
ぞわっとする。
何が悲しくてそう思わなければならない、そう彼女は既に人間不信。
全て父がそうさせた、それが口癖である。



「話すんだ、小鳥」


「っ!」



彼の突然の呼びかけに目を丸くしたのは言うまでも無い。
今まで名前を一切呼ばれなかったのだから、そうあの日から私達の名前は消えた。
あっという間に、余韻に浸ることなく、それも儚く自然に。
それをヒロトは今呆気なくひっくり返す、刹那の出来事なのに自分の中では長い時間の様で、折角止めた涙が今度は止めようも止まることなく流れ続ける。


そんな彼女を今度は大きく腕を広げてから彼は優しく包む。
ぐっと強く、痛いという感情にのまれても彼は抱きしめた。
どきりと胸がはね、どくんどくんと心臓が動く、熱く痛く乾いた喉にごくりとゆっくり唾液を流し、焼けそうなほど熱くなった目頭が脳を支配する。
まるでダムが決壊したかのようにウィン、基小鳥は泣き叫んだ。



「ヒロト…名前を…!」


「ごめん…オレの力が小さいばかりに、リュウジを助けることが出来なかった」


「どうして名前…私もレーゼも…名は…もう!」


「覚えてる!忘れはしない…大切な家族じゃないか…リュウジは勿論、小鳥も」



沢山呼んでもらった、他のみんなの名前も沢山言ってもらった。
溜め込んでいた涙はヒロトの部屋で一晩中流され今までの分の話も散々と聞かせる。
それでも彼は嬉しそうで、そして悲しそうだった。


いつも冷たく冷え切ったベッドに、彼女の泣き声が聞こえてか晴れやかな子と涼やかな子が駆けつけレーゼの悲しみを仕舞い込み狭いベッドに四人で眠りについた。
昔を思い出してか、彼らの頬には涙の乾いたあと、辛くなってオレ一人静かに泣いたのは秘密だ。
ヒロトは嬉しそうに布団に潜り込み、すっと入り込めた夢の中であの頃を思い出していた。





儚く消える。
(さぁ次は)
(誰の番かしら)

手を繋ぎ隣ですっと眠っている小鳥が再び涙を流してこう言った。

(…みんな私を置いてかないで)

すかさずオレは彼女の額にキスを落として

(誰も小鳥を置いてかないよ…)











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ヒロトの一人称わからん←
いやオレなのは判ってるけど、字とかグランの時とか判らん←


にしてもくそ長い、甘くない、家族っていいね。
因みに最後のは小鳥さんが壁側で、
小鳥さんヒロト涼野南雲、
の順番になってます。
しかも中盤辺りとか考えていた内容じゃないからね、だから長いのよね。
最後にいくにつれて面倒になってるから雑だしね。


その内消そう、そうしよう。





(風羅)

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