「うっそん…」


グズっていた空が大泣きしている。
久々に部活がないからゆっくりしようと決めていたのに、わたしって不運?


そして、私の手持ち品に傘と言う素晴らしいものは入ってなく、あぁどうしようとうずくまる私の周りでみんな楽しそうに話ながら帰宅していく。

なんで、みんな無視するのだろう…


悲しくなったわたしは、下駄箱のそばで雨が弱まるのを待ちながら、退屈な時間を過ごすことに決意を決め、じっと大泣きする空をみた。



「ふっ、帰れる気がしねぇ」
「天気予報くらい見たらどうだ?」


ん?と横を向くと、傘を開こうとしてる南沢がいた。

「お天気お姉さんに見とれて聞き逃しちゃったの」
「あっそう。」


短く適当に返されてむぐぐ…となったが、背に腹は代えられない。期待の眼差しを南沢に向けてみたが、アヤツは何事もなかったように帰路につく。けっ、分かってたさ…。


「入るか?」


ふてくされてしゃがんだ私にそんな声が聞こえてきた。
南沢先輩の声だ…いつもはアレだけど、やっぱり良い奴なんだ。


私は嬉しくてパッと顔をあげた。



「ここまで来たらな。」



のに、南沢は土砂降りの中を2メートル歩けって笑いながら告げやがった。

だけど、ここで傘を逃すと、もう終わったも当然じゃないか。
ここは少し我慢をして…


「お邪魔します。」


鞄を守りながら南沢先輩の傘に飛び込んだ。


が、まぁずぶ濡れ。


そんでもって、その後は傘からはみ出した左肩から下を雨がびっしょり濡らしてくれました。くぅ、寒い。


まぁ先輩のお陰で鞄は守れてるから文句言えないし、言って追い出されるのは勘弁だし。寒いけどグッと我慢して無言で歩く。


「……」


あれ?そう言えば先輩と二人きりになったことなかったな…そうか、だから沈黙なのか。そうだよね、先輩私と話すことなんか無いし…。


「危ない。」
「へっ…?」


先輩の事考えてて色々上の空だった私は、前から来ていた車に気がつかなかったみたい。

先輩が傘を持たない右手で私を抱き寄せてくれたお陰で、怪我はなかったけど、危なかったな。


「おい、」
「あっ、すいません。気を付けます。」


不注意で車とゴッツンするところだったんだ…ここは素直に謝らなくちゃ。

まだ抱き止めてくれている先輩に服濡れちゃうよ…と思いながら先輩の口が動くのを待つ。


「ちがう。何で濡れてるって言わなかった。」


冷えてるじゃないかと怒る彼に、だったら最初の2メートルで軽く濡れてるよ…と文句が浮かんでくる。


「言ったら追い出されるかと思ったし」
「バカ、そこまで鬼畜じゃない。」


私の左肩から右肩に回された先輩の右腕に力が入ってちょっと痛かった。


「先輩?」
「家に寄れ。三国に迎えに越させる」
「何でですか?」
「風邪引くだろ。」





相合傘





少し強引な気もしたけど、珍しく真剣で優しい声音にコクりとうなずいた。






20110804誤字改定


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