「あっ、三国先輩ちょうどいいところに。辞書貸してくださいよ辞書」
3年の部屋で水色のリボンを着けたこいつは、緊張も礼儀も何もなく、辞書貸せと催促し出す。
昔は、お兄ちゃん、太一兄と可愛かったのにな。いつからか態度デカイは減らず口だわで可愛いげの欠片もなくなってしまった。今後のことが俺は心配だ。
「ねぇ、貸して?」
「残念だが俺は持ってないよ。南沢辺りに聞いてやるから待ってろ。」
「南沢?あぁ、顔はいいのに性格微妙先輩?」
何気なくとんでもないことを口走る○○にお前な…と呆れていると、
○○の肩に男のものとみられる手がポンと乗せられた。
そして、「ん?」と首を捻って後ろを向いた○○が悲鳴のような声を上げた。
そりゃそうだ。南沢が後ろで笑いながら立っていたんだからな。
「貸してやるよ、辞書。」
その言葉に青ざめながらもちゃっかり手を伸ばし辞書を受けとる○○に、今後何があっても泣きついてくるなよ…とため息がこぼれる。
転落の合図
辞書を開けると、検索欄のところに、"いい度胸だな"と書いてあった。
そして、これが私の転落劇の始まりだった。