「そして、ここに来たんだね。」
「そうよ。兄さんはどこにいるの?」
「会ってどうするつもり?」
「二度と…○○に近づけないように殺してあげるの。」
それは、物騒な話だ。
ニコニコしながら聞いている不破は、軽い調子で言った。
「ねぇ、例えば○○と三郎が恋仲になったとするよ…そうして、結婚したら、○○は君のお義姉さんだ。そうしたら、一生○○はきみの近くにいると思わない?」
「………そうね。でも嫌…○○は私のよ。あの赤い唇も、艶やかな黒髪も白い肌も、笑顔も全部全部全部私のなの!!4年間、私の事だけ見るようにずっと頑張ったのに…嫌よ!!」
ふぅ…と荒げた息を吐き出して不破を見ると、彼は無表情だった。
「××………お前は兄さんと雷蔵を見分けられると思ったんだけどね。」
「えっ…?」
「私は、雷蔵じゃなくてお前の兄さんだよ。」
私が不破だと思っていたのは、兄さんだった。
すぅーと血が引いていくように思う。
こいつは、こいつは…(私が見分けられないように雰囲気まで変えてたの?)
「××…終わりにしよう。」
「○○は、もう私に心を傾け始めたんだ。もう、お前の思い通りにならない。」
私の育て上げた大切な○○はこの男に盗られてしまう…
「あの子は、私のよ!!」
「いい加減にしろっ、人は物じゃない。彼女は、彼女だ」
その冷たい目に、私は震え上がり黙るしかなかった。
効かなくなった毒。
私の物なのに…。