「あら…たいへんです。」
私は散らばる包帯を拾い集め、綾君の掘った罠に引っ掛からないように気を付けながら、助けを探しに行くのでした。
透明な羽衣
食堂のおばちゃんのお手伝いと雑用をやるようになり数ヵ月が経ちました。
忍術学園の皆の名前も大体覚え、綾君の罠の位置も何となく推測できるようになった頃、私はもう一つの仕事ができてました。
それは、綾君の罠の位置を人に教えてあげること。(でも、会計委員さんはダメです。立花君に怒られてしまいますから。)
保健委員さんには常々教えてあげているのですが、なぜかよく落っこちてしまいます。なので、私は見つけると誰かしら助けてくれる人を探したりもします。
なんだか、忙しいです。
「あっ、食満君…あのね、」
「言わなくても平気ですよ○○さん。包帯で大体わかりますから…」
はぁ…とため息をついた食満君は、私が指差す方へ包帯を引き取り向かってくれました。(私のお仕事は終わりましたから、当初の目的である綾君に会いに行きましょう。)
ちょっとルンルン気分で穴をせっせと掘っているだろう綾君のところへ向かうのでした。
「綾君見つけました。」
腰まで掘られた穴にすっぽり入った綾君に声をかけるもなぜか無視されてしまいました。
聞こえなかったのかな?いつもならひょっこり穴から出てきてくれるのに…寂しいです。
それとも何か他に理由があるのかな?
「綾君?」
「酷いです。」
心配になって近づいてみると、ぽつりと返されました。
「僕がせっかく掘った落とし穴に引っ掛かる人が少なくなりました。」
悲しそうに呟かれる文句に、私はなんて事してしまったのだろうかと思いました。
ここは忍術学園です。
罠に気づいて避けたりできなくてはならないから、先生達は綾君の穴堀を黙認しているのではないか…突然そう思えてきたのです。
それに、綾君に嫌な思いをさせてしまったと思うと凄く胸が痛みました。
「………(ごめんなさい)」
私は、何も言えずに綾君に背を向け走り去ることしか
できませんでした。
綾君について分かった気になって、私は何も知らなかった。
ここに羽衣があるなら、羽織ってどこかへ行って透明になってしまいたい。(天女様のお召し物を考えに出すなんておこがましいけど…)
「きゃっ」
そんな事を考えているうちに、涙で歪んだ視界が暗闇に染まった。
あぁ…私落ちたのね。