「兄様……」
転機は突然、本当に残酷にやって来ます。
「さようなら」
私は迷わずきびすを返すと、梅若丸を手にして綾君の穴堀地区へ走り一番深い穴罠に迷わず飛び込みました。
ブラックホール
なんと言えば良いのでしょうか…とても私的なことですので、飛ばしちゃっても平気です。
私のお家は、隠れた剣の流派を守るお父様、優しいお母様、融通の利かない兄様と4人で細々と暮らしていました。
父が流派を広めると言い出し出ていき4年。その後を追うように兄様が出ていき3年。母が病気で逝ってしまい約1年。
父、兄共出ていったきり音沙汰無く心配と過労で母は若くしてなくなりました。
そんな事も重なり、父兄が私は大嫌いです。
私はただ、4人で仲良く暮らしたかったのです。なぜ、家族はバラバラにならなければならなかったのでしょう。
まさか、小松田さんがお客さんとして兄様をつれてくるとは夢にも思いませんでした。なぜ今さら?そう思いながら久々に見る兄はどこか悲しそうな、どこかほっとした様子でした。
兄は手を前に突きだし私を今度は真剣な目で見ると、
(あぁ…なんだかわかりました。)
「○○、梅若丸を渡しなさい。」
と、一言述べました。
やはり、私の事ではないんですね。それだけでも悲しいのに、
「私の大切な梅若丸を取るんですね。……」
あぁ、なんて最低な人なんでしょう?(元気か?どうしていた?…そんな私への言葉はないのですね。)
「さようなら」
私は、たまらず学園長先生の部屋から飛び出しました。