世界は一定のリズムを刻みながら回り続けて、
春はいつでもやって来ます。
「太一、もう夏だね。後半年くらいで卒業だよ。」
「もう、夏か…。」
「あっという間だったね。今年の春に出会って、後半としで卒業なんだね。もっと早く出会ってればなぁ」
だったらな。なんて期待は、無意味だって分かってるんだけど、でもしたくなるくらい、あなたと過ごす時間はめまぐるしく、キラキラして素敵なんだ。
回る世界。
「たーいち!!」
夏休みのグラウンド。帰宅部の私には縁の無いところのはずだったんだけど、三年の夏は少し違った。
このグラウンドには、太一がいる。自信満々で作ってきたお弁当を右手に持ち、左腕をブンブンと降りながら私はここ数日、毎日のようにグラウンドに遊びに来ている。
他の部員達は、私が練習の邪魔にさえならなければ何も言うつもりはないらしく、私を食事の輪へと自然に入れてくれる。みんなとても優しいのだ。一昨日辺りからは、マネージャーのお手伝いもしてたりするから、葵ちゃんたちとも仲良くなったりしてる。
「太一、今日は自信作なの。」
「なまえ、昨日も同じ事いてたぞ。」
「そうだっけ?じゃあ、昨日より自信作。」
短いお昼の休憩中、私と太一は話しながら一日で一番好きな時間を過ごした。
「太一、美味しい?」
「あぁ。」
幸せなこの世界がずっと続けばいいのに。
でも現実は少しシビア。
彼の進みたい道と私の進みたい道は全く違くて、
高校の進路は、もちろん逆方向。来年の春、私と太一の制服は違うものになる。
「次の春来ないといいな。」
ポツリと呟いた言葉に、太一は苦笑した。
「春が来たら、会えなくなるのか?」
「そうじゃないけど、」
「次の春は、 なまえと 違う学校かもしれない。だけど、次の春が来ればまた一年思い出が増える。」
「うん」
そうだよね。
きっと、次に来る春は私の願うものと違うだろう。
でもきっと、次の春も夏も太一と一緒に空を眺めている。
そう思えば、学校が離れてもそんなに大した事じゃないのかなぁ と、ちょっと思えたりした。
「太一。次の春は、何しようか?」
でも、やっぱりまだまだ卒業式には来てほしくないな。
(あいつら、俺たちがいること忘れてるな。)
(いつもの事だドン。)
後書き
イチイチャしてるかな?私の中ではしているんですが。移管性私の感性は人とずれちゃってますので、もし気に入らないところあったら行ってくださいね。
なかなか出筆が遅くて申し訳ないです。
三国さんは、幸せを静かに噛み締めるタイプだと思います。