「太一、この問題どう解くの?」
「whichの関係代名詞だろ…これは、このwhichは目的語にかかるから…こうじゃないか?」
「あっ、解けた!やっぱり太一はすごいな…」


向かい合わせに座ったなまえがカリカリとピンク色のシャーペンを動かす。

空欄が目立っていたプリントもいつの間にか黒く埋まってきた。なまえと勉強していると対抗心からか、だらけることなく手が進むんだよな。


「そんなこと無いさ。
数学はなまえの方が得意だろ。」
「べつに、そんなできるわけじゃないじゃん…」


それとも、軽くしゃべりつつ続けるから、苦にならないからだろうか。


ほのかに頬を染めなが、俺が誉めたことを小さく否定するなまえは、とても可愛らしい。

素直にほめられることが苦手なんだと気づいたのは、付き合う前だったな。
学級委員の仕事をあまりにもテキパキこなすものだから誉めたのが切っ掛けだった。今と同じようにほのかに染めた頬を隠すようにうつ向き「そんなことない。」と言うのだ。

勉強もでき面倒見のいいなまえが見せたそんな表情に俺は一瞬で恋に落ちた。

その気持ちを素直に伝えたのは、天馬がやって来たあと…そう、俺がサッカーと向き合った後、


悩みごとが一つ消え、毎日の生活がより楽しく感じられるようになった時のことだ。


なまえに、何かいいことあったのかと聞かれたとき、この人はちゃんと周りを見ているのだな、と感心し「なまえは周りをよく見ているんだな」と俺は言葉を返した。
その返事にビクリと体をこわばらせ、「気に…から」と言葉を濁らせた。

俺にはそれが「気になる人だから」と聞こえ、舞い上がった。その勢いで「なまえにちゃんと見てもらえて嬉しいよ。俺はなまえが好きだから。」と告白した。

「えっ、えあっ、えぇ…」顔を赤くしたり青くしたり俯いたり俺の顔を見たり、コロコロ表情を変え、目線をさ迷わせるなまえにクスリ…と笑ってしまったら、凄く怒った顔で睨まれ「笑わないでよ、わたし真剣なのに、真剣に三国が好きなのに…」
と顔を今まで見たことないくらい赤くしたなまえに告白の答えを聞いた。


それから、しばらくは「三国」と呼ばれたが、海王戦辺りでは「太一」と呼び方が変わったんだ。


そんな小さな変化が少しずつ積み重なって、俺の心の中を満たしてあたたかくさせる。


「ねぇ太一、さっきから手が止まってるよ。」


思い出に浸りきった俺の意識を浮上させた本人は、本の少し不機嫌そうにシャーペンで机を叩く。

「悪い、少し思い出に浸ってたんだ。」
「ふぅーん。」


ちょっと考えた後、何事もなかったように勉強に戻っていくなまえを何となく眺めた。





スタディー




今日の太一はちょっぴり変だ。
上の空だったり私をジッと幸せそうに見たり。


ぷくっと頬を膨らませ、いったいなんなんだと問い詰めれば、「なまえとこうして勉強できて幸せなんだ」と笑って言うものだから、心臓が止まるかと思った。だってすっごく素敵な笑顔なんだもん!!


「ばっかじゃないの、」


あぁもう、そんな笑顔向けられたら、勉強になんか集中できないじゃない。






…後書き……

企画参加ありがとうです!!
優等生=頭がいい=学級委員という安易な思考から書いてみました。

勉強も料理もできちゃう三国さんとかめちゃ美味しい…とかとか思いながら楽しく書いてました!

では、しつれいします〜


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