「○○…」
いつも隣にいた幼馴染みと挨拶もしなくなったのはいつからだろう。
登校も帰りの時間も違い、近く遠い存在となった思い人。
いつも背筋をピンとはって生徒会の仕事をこなす彼女に、なんと声をかければいいか分からなくて、近くにいても声をかけなくなった。
話したいことも相談したいことも沢山あるのに…昔みたいにすべて受け止めて欲しいのに…
「○○、○○……」
両手を握りしめて、部活が始まるまで一人彼女の名前を呼んだ。
重解
「拓人…」
部活のあと、いきなりの土砂降りに傘のない俺は困って立ち尽くした。霧野たちには監督に用があって先に帰ってもらったし、頼れる人はいない。
そんなとき、○○が現れた。
久々に名前を呼ばれたのが嬉しくて、思わず泣きそうになった俺に苦笑混じりに
「泣き虫…」
と○○が言い、俺の両頬に手を添えて親指の腹で涙を拭ってくれる○○に甘えるようにすがり付くと、ギュッと抱き返してくれた。
「落ち着いた?」
「少し…俺、○○に話したいことも相談したいことも沢山あるのに…○○に会えなくて、俺、」
「辛かった?」
「あぁ…」
「私も、拓人が頼ってくれなくて寂しかった…」
誘惑するような、そんな目で俺をじっと見る○○の唇に自分のを重ねると、○○は嬉しそうに笑った。
「帰ろうか、泣き虫君。」
「泣き虫君って…」
そんな呼ばれ方嫌だなと思いつつ、○○に流されるままピンクの傘に入り帰ることにした。
「拓人、話したいことも相談したいことも沢山あるなら、全部聞いてあげるよ。」
「○○?」
「だから、拓人は私にだけ頼ればいいの」
○○はすがるように俺の腕を抱いた。
((どうしようもなく愛しい))