髪が潮風でべたついた髪が風に遊ばれる。
甲板の上でサボった掃除当番に罰掃除を追加して見張っていれば、ああだこうだと文句が飛び交う。
でもそれは険悪なものじゃなくて、ふざけた感じのものだから別段気にはならない。
「さぁ、早く終わらせて。自由時間がなくなるよ」
ちょっとした脅しに、セカセかと口でなく体を動かし出した掃除当番に少し笑みがこぼれる。
普段からこんな風にやってくれれば良いのに…
終わった、終わったと背伸びする奴らに、こっちは見張りで自由時間がなくなったのよ?と意地悪を言うと、それは言わんでくださいと悲しげに返ってくる。
そんな彼らと離れ、自室に向かうと、なんと頭であるシャンクスが手招きしながらわたしの部屋の前を陣取っていた。
「なによ?」
「いや…少し気になってな。」
何がだろうか?
この前、部屋で話していたことについてか?話したと言うか無理に言わされたと言うべきか…。
「お前を片腕で抱き締めることはできるか?」
「さぁ?」
何を言い出すと思えば…
片腕で抱き締める事はできるだろう。
私が拒否らなければだが。
さすがのシャンクスも私が腕から抜けようと思ったら止めるのは難しいだろう。
「試してみたら良いでしょ?」
挑戦的に誘えば、力強く抱き締めてキスされた。
どうしよう。なんかときめいた。
「○○、」
「なに?」
「もう少し」
「なら、ずっと。」
シャンクスに体を預けて、目を閉じた。
「なら、いっそのこと俺の横にいろ」
「プロポーズ?」
「だめか?」
「分かりにくい」
「お前が分かればそれで良いだろ?」
それもそうか…。
なんか言いくるめられた感があるけど。
返事の代わりにキスすれば、どこからともなく冷やかしのヤジが飛ぶ。仕事サボって何してるんだか…
なんだかなぁと思いながらも、ヤジに答えるシャンクスの腕の中、笑いながら私も皆に答えた。
(なんでもやってみたもの勝ちってことかな?)
気になる片腕で抱き締める
一度抱き締めたんだから、離したりしたら許さないから。