この頃、ある人物に会うのが怖い。
会うと心拍数がはね上がり、顔が真っ赤になる。
分かりやすいにも程がある。
ああ、困った。
裸足の恋
「もぉ、引きこもりしてないでいっその事告白してしまいなさいよ。」
「いいっやだ!!」
「奥手ね…まったく」
姉様達の休憩部屋の隅っこに引きこもってる私は、親父様に呼ばれ無いかぎり外に出ていない。つまりは引きこもりと化しています。
今は平穏無事だから、私が居ようが居まいがあまり支障はないから、皆ほっといてくれている。
まぁ、親父様が何も言わないって言うのもあると思う。
親父様は私に少し甘いのだ。
だからと言ってサボっていいわけじゃないけど、エースに会う度ドジを踏んでは、皆も迷惑なのだろう。誰も文句は言わない。
今は大人しくナースの姉様達の着せ替え人形をしているので、姉様達も私を追い出そうとはしない。
ここは私の楽園と化してるわけで、一日ゴロゴロしていれば良いと言う至福の場所。
因に今は、レース生地が何層にも重なった可愛らしいワンピースを着ているのだが、フワフワして何だか着心地が悪い。
「こんなところ、誰かに見られたらたまったもんじゃない」
「そうかい?なかなか似合ってるよい」
「なななっななっんでいるの!!マルコ」
姉様の休憩部屋に何でいるの!!
誰もいないと思ってヒラヒラしたモノを着ていたのに、なんてこった。
「そろそろ引きずり出してこいって言われてよい。親父に」
「でも、私たちはもう少し着せ替えしたいから○○には言わなかったんだけど、とうとうお迎え来ちゃったわ」
「ははははっ早く言ってよ!!きっ着替えてたのに!」
「あら、それで出たら良いじゃない」
「いっ嫌よ。それに仕事にならないもの」
この服装で外に出るなんて死ぬほど笑われるために行くようなものじゃない!
仕方ないから、近くに居た姉様の後ろに隠れた。
「あらまぁら諦めが悪いわね」
「可愛いのに」
「かかかっ可愛いのは服でしょ!!」
諦め悪く駄々をこねる私に頭をかくマルコと困った顔の姉様たち。
でも、諦めない。こんなかっこじゃ外に出れない。死ぬほど恥ずかしい。恥ずかしすぎて死ねる。
「何やってんだマルコ?」
うそ、この声って・・・
「ちょうど良いときに来たなエースよい」
よりによってこんな時に、なんでエースがいるのよ!
「ののののっ覗き!!」
「覗きはねーだろ。」
思わず叫んで姉様の後ろにぴったりとくっついた。
これこそ、姉様の後ろから動けない。
空気読め…いや、エースはとっても空気読める人か。
違う違う、何でいるの!!1・2番隊長が動くような重要人物じゃ無いわよ私は。
出て行け-。出て行けエース。
「似合ってんだから外出ればいーじゃねーか。なぁ」
「そうよね。まったくこの子は、」
「そうよ、私たちが見立てたのよ似合わないわけ無いじゃの。」
口々に適当なことを言う皆に頭がくらくらする。
だから幻聴が聞こえたんだ
エースが似合ってるって…あり得ない。
あり得ない。
「あら、フリーズしてるわ。今のうちに運んじゃって」
「おう、わりーな」
この後、
甲板までエースが運んでくれたと聞いて、またしてもフリーズする私をみんなが笑うのは言うまでもない。
(似合ってたじゃねーか)
(良くないもん)
(可愛かったぞ)
(皆してからかうな!!)
(ほれほれ、怒るなって)
その日一日、親父様の傍から離れなかった私。
bkm