「ベポが怪我して治療中っ!!そんな…」
夜中。
それが私の一番嫌いな恐い時間。
それがどんどん近づいてきた。
感傷ミッドナイト
「ねぇ、」
自室から出てローの部屋のドアを開けて中をそっと見てみる。
「いつまで起きてるんだ。」
読んでいた本から顔をあげたローは、少し睨むように見てきた。(恐いな…)
「いいじゃない。どうせまだ寝ないんでしょ。」
そのままローの部屋に勝手に入って、勝手に隣に座ったのに、ローは怒った様子は見えない。
怒りそうなタイプだと思ったんだけどな。
そこら辺にあった本を一冊読んでみたら、ローは自分の読んでた本に視線を戻した。
本にまみれた生活をしていたけど、誰かの隣で本を読むなんて何年ぶりだろう。
ちょっと嬉しくて、何冊も何冊も読んでたら、この部屋に来てから数時間経ってしまった。
「そろそろ寝たらどうだ?」
「うん。」
うん。と言ったけど、出て行きたくはないな。
夜中の一人は嫌いだから。
ぽけーと考えていたら、背中が温かくなった。
あぁ、ローだ。
「まだ居るって言うなら…襲うぞ。」
…殴りたい。殴りたい。殴りたい。殴っていい?私こういうの大っ嫌い。
「まぁ、そんなに睨むな冗談だ」
ほんとに冗談なんですか?って言いたくなる悪人顔してるよ。
「そもそも、なんで男の部屋なんか来るんだよ」
「男しかいないじゃない。」
「確かにな。で、」
でって…聞くんだね、あくまでもさ。
「恐いの。夜中の一人がさ、今まではベポの所で寝てたんだけど、今治療中でしょ?」
「それで俺か。(ベポの代わり…)」
なんだか、不機嫌になった。不機嫌になっったかれと一緒にいていい思い出なんて1つもない。これは、逃げ時かしらね?
うん、身の危険を感じるからこのままそーと、出口に向かおう。
「待ちな」
「嫌よ。」
そんな私に気がついたのか、彼は私の手をつかんできた。それに対して私はパシリと手を叩き落として無我夢中で足を動かした。のに、いきなり体が傾いたので足下を見ると、右の膝下がさっき読んでいた本と入れ替わっていた。
「ROOM」
うそでしょ、ここで能力使う?なに能力の乱用しているのよ!能力者のバカ野郎。
「ちょっと、足返しなさいよ。」
「そんなことしたら逃げるだろ?」
「逃げるわよ。」
私の片足をボールでも扱うようにポンポンと弄ぶ彼に殺意さえわいてくる。
あぁもう、これじゃうまく立てないじゃない。いらいらしながら手元にある本をローに投げつけてやれば、気にした風もなくかわしていく。
「まぁ、あと数時間話してればいいことだろ?」
そんなこと言って、動けない私を抱っこして元の位置に戻るとローは嫌な笑顔で笑う。
格好いいと思ってしまうあたりが腹立たしい。
だけど、さっきのとは違ったから、まぁいいか…真夜中に一人でいるよりは。
それにしても今夜は、ベポのふかふか感がないのが残念。 ……あっでも、帽子ふかふかしてる。