ふーん。へー。
と、この世界のいろいろなことを吸収して早くも一ヶ月が経つ。
それにしても、この世界はとても興味深い。ローの本を見ながら知識を増やした私は、航海士補助として何とかやっていってる。
「それにしても違いすぎるわ。こんな世界もあるんのね。」
今まで見たどんな空よりも素敵な空の下歩を続ける船。私の今の生きる場所。
そして今は、お気に入りのベポに肩車をしてもらいながら、読書をしてる。
今日は海軍におかけられることも、他の海賊に遭遇することもなくのんびりとした一日である。ローは、あっちで分厚い本に目を通しているし、後のはなんか忙しない。
あぁ、なんて自由なんだろう。
The's all.
「ねぇベポ。私に付き合ってていいの?」
「アイ、キャプテン命令だからね。」
「ふぅーん」
ベポの肩に脚をかけて、頭に顎を乗せながらわたしはペポと話してる。さっき読んでた本は読み終わっちゃって今はかなり暇。
そうそうベポのふかふかって凄く落ち着くんだよね。このまま寝てしまいそうなくらいだわ。
自由でのんびりとした現実に浸れば浸るほど、私はどんどん過去の苦しい思い出に潰されそうになってしまう。あのとき過ごした無駄な時間が、私に与えた苦痛はいくら時を経ても消えないであろう。このまま口を押さえ飲み込んだままだといつか私はこの苦しみにまた耐えられなくなってしまいそうだ。吐き出してしまいたい。ベポなら、聞いてくれるかな?ベポなら、私の事受け止めてくれるかな?きっと聞いてくれるという確信のない自信が沸き起こって止められなくなった私は、ベポに小さな声で話し始めた。
「ベポ……私ね、死にたくて死にたくて、自由になりたくて高いとこから飛び降りたの。
でもね、ここには、生きてても自由を見つけられる。不思議な感じなの。」
「○○はココが好き?」
「そうね、あそこより好き。ベポもいるし。」
ふかふかの頭に右頬を埋めて右手で毛並みを崩すように撫でる。
「それはよかった。
あっ、キャプテンが呼んでるから行こう」
ベポが歩けば振動が私にまで伝わる。
温かい体温。
本に埋められて、紙とニラメッコのあの退屈で辛い日々と全然違う。
なんて温かい日々なんだろう。苦しみが少し吐き出され楽になった私はこの暖かさを体でめいいっぱい感じた。
ローの元にやって来たベポは私を下ろすと仕事があるのか行ってしまった。
「よぅ、ベポが気に入ったようだな。」
「えぇ。ココかなり気に入ったわ。特にベポの肩車。」
「ふっ」
「何よ」
「お前もそんなのんきな顔するんだな」
「そうね、きっと貴方たちのおかげよ」
貴方のそう言う小さな優しさが私を変えた。笑うことの怒ることも忘れただただ絶望していた私を貴方は救ってくれた。そう思うのよ、本当にね。
「タダで居座ってんだ。洗濯くらいは手伝え」
「了解よ」
一ヶ月前とまるで違う日常。変わった運命の道筋。すべてが決まった運命をたどるわけじゃない。ならちょっとくらい外れたっていいじゃない。
その間くらい幸せでもいいじゃない。そう思えるようになった私は、やはり一ヶ月前の私とは明らかに違う。
そしてもう一つの変化。私に芽生えた女としての自覚。
ロー、私貴方のこと好きよ。たぶん、LOVEの方で。