「戦争…」
赤髪が親父様に会いに来たのはついさっきの事だ。
エースが捕まり、親父様が助け出すと決めたときから、こうなることは分かっていた。
"戦争になる。"
この争いで多くの仲間が命を失うことになることはわかっている。
1を失うことを恐れ100を失うかもしない。
でも、それでも私たちは助けたいと思ってしまう。家族をみすみす公開処刑などにさせてたまるかと、そう思ってしまうのだ。
赤髪は、その気持ちをちゃんと分かっている。わかった上で危険をおかしてでも親父様に話に来た。
「この戦争は、きっと世界のバランスを崩してしまう。でも…それでも」
私は、エースの元へ行きたい。
この子と一緒に…。
さようなら
さようなら
さようなら。
海軍本部マリンフォードへと船を進める途中、ナース達非戦闘員を下ろすため寄った島で私は親父様に船から下ろされた。
ナースの姉様達が降りた後、その中に船から投げ捨てられた私は、なかなか現状がわからなかった。
船が海へと滑り出した頃やっと、置いてかれるのだと理解して悔しさと悲しさが爆発した。
「親父様?どういうことなのっ」
「お前はナースどもと一緒に船を降りるんだ。」
「嫌、なんで!!」
あまりの事にあふれだす涙を目にいっぱい溜めて海と陸のギリギリまで寄るも、能力者の私にはこれが限界だ。
「今のお前は戦える状態じゃない。それだけどなくあそこにはエースがいる。お前冷静に場面を把握できなくなる。そんな足手まとい必要ではない。」
でも、それでも、と嫌々と首を振る私に、「足手まといなんだ。」と大きな声が届いた。
なんとか留めていた涙は、ポタポタと頬を伝い落ちていく。
「皆行ってしまうの…行ってしまうのに、私は、なにも…」
いつまでも、いつまでも子供のように泣きじゃくる私を優しく抱き締めてくれたのは、姉様で、マルコじゃない。私は、船に乗ってないのだ。
いつも優しく厳しかったマルコをチラッと見ると、決意のこもった目で私を見てくれた。
「わたし…待ってるよ。」
声になったかわからない呟き。それは、海の音に飲み込まれた。
身を潜めていた私が、新聞ですべてを知った頃、エースも親父様も皆遠くに行ってしまっていた。
「別れっていつ来るかわからないんだね…すぐに、皆帰ってくるものだと信じていたのに…なんでこんなことになったのかな?なんで…さよならがあんな…あんなさよならだったの…」
止まることの無い涙は、ただただ流れ、そして落ちる。
さよなら
さよなら
さよなら
ちゃんとお別れしたかったよ。
「さようなら、おやすみ。親父様、…エース」