「サッチ悪魔の実を拾ったの?」
戦闘から帰ってきた後、サッチの横に座りながら訪ねると、おう。と一つ返事をして不味い果実を箱の中からひょいっと持ち上げた。
「不味そう…ううん。不味よ絶対に」
「まぁ悪魔の実だからな…」
ツンツンと忌々しい実をつついて、サッチと話していれば、エースやマルコも加わってきた。
「お疲れ。二人とも怪我はねぇかい?」
「怪我はねぇよ」
「私も。」
「腹減ってんならまだ食堂残ってんぞ。」
「お前は飯ばっかだな」
「デザート残ってる?」
いつも通りのいつもの会話。左にサッチ。右にエース。前にマルコ。円になって話すのは良いけど、隊長三人にかこまれるとさすがに威圧感が…。
「食うのか?」
「んっ?コレか…まぁ食うかな。」
「どっちだよい」
「不味いってのがいただけねぇ」
「伊達にコックのかっこしてないな」
「そりゃどうも」
「コックのかっこか…あっ、サッチの作るサンドイッチ凄く美味しいよ」
「俺も思う」
照れるからやめろと、エースと私の頭にてをおいて髪を粗っぽく撫でられ、私とエースは笑った。
嘘と言って
「ふっ…ふぁー。」
重いまぶたをあげ、見張りの交代をするためにベッドから降りた。
昼の戦闘でちょっと疲れてはいたけれど、しょうがない。言い訳を並べてサボってもどうせやらなきゃならないんだから。さっさとやって終わらせてしまおう。
「寒い…」
少し肌寒い外から毛布持ってこう。ベッドからはぎとって丸めて抱き締めて外に出るたら、奥の部屋から明かりが漏れているのが分かった。
「あれ…サッチ疲れたから寝るとか言ってたきがするんだけどな…」
抱いていた毛布を広げて肩にかけて、
そっと様子を伺ってみたら、人が外に出てきた。
「あれは、サッチじゃない………えっ、ティーチ?」
部屋の主でないことはすぐに分かったけど、誰かわからなくて、マルコかな、エースかなと考えていると、意外な人物だと気づいた。
2番隊のティーチだ。
ん?エースなら分かるけど、なんでサッチの所にティーチがいるの?
隊長でも、同期でも、ましてや親しい友人でもない彼がなぜあの部屋になんのようなんだろう?
「気になるな…」
気になったから、ティーチが見えなくなった辺りで、私はそっと部屋に入った。
それは、ちょっとした好奇心からで、「サッチとティーチが一緒なんて珍しいね」と声をかけて少し話して、
「サボってないで仕事してこい」って部屋から追い出されて、
差し入れにココアにマシュマロ浮かべたのを持ってきてと甘えて…そんないつもと同じ夜を過ごすつもりだったのに、
なのに、
世界は残酷で、
私に残酷な現実を突きつけた。
「……サッチ?」
扉を開けたら、迎えてくれるはずのサッチが床に倒れていた。
血の海に沈む、大好きな兄さん。
見間違いであってくれ。
悪い冗談であってくれ。
嘘だと言ってくれ。
鼻をつく独特の鉄の臭いに涙が溢れる。
「あ…やっ、いやぁぁぁ」
必死にすがりついたのに兄さんは、抱き返すことも頭を撫でてくれることもなかった。
(あんなに仲が良かったのになんで?
なんでこんなことになったの?)