「お土産だよ!!」
団子屋での仕事を終えて、最近やっと仲良くなった黒馬のはや三郎を馬小屋に入れてブラッシングした後、私は食堂に向かった。
おばちゃんに許可をもらった私は夕食時の活気がちょいと引いた食堂の隅の机に持って帰ってきた余り品をとどさっと置いた。そうしたら、
その音を聞き付けたかのように、元気のいい低学年組が飛ぶようにしてやってきた。
「食べたいなら、先に食器片してきなさい!」
この頃の決まり文句を並べながら、食器を片したよい子達から順番に三郎と八君に手伝ってもらいながら一人一人手渡しで団子を与えてやる。凄く嬉しそうにみんな受け取ってくれるから、重思いして持ってきたかいがあるってものね。
「ところで、私たちのぶんは?」
最後の一本を乱太郎に渡すと、三郎が残念そうに聞いてきた。
甘いもの好きだな…本当に。お手伝い用のお団子は別にあるから。と、告げると嬉しそうに笑った。
空になった包みを小さく丸めてポイッとゴミ箱に捨てて、二人を連れて空いた席で一息。
もういっそのことバイト代お団子にしてもらって皆と食べることにしようかな?とか考えてみた。
でも、全部バイト代を団子にしてなおかつ余り物を持ち帰ると…持ち帰れない量になりそうだからやっぱりやめよう。
「○○、何を百面相しているんだ?」
「ん?三郎だ。」
団子を食べ終わり八君と遊びに行ったと思ってた三郎が私の方に手を置いて上から私を見ている。
なんだ、こいつ可愛いな。
「おばちゃんにお茶もらったから、部屋に戻らないか?」
見ればお盆に湯飲みが2人分置いてある。この子はなんと気が利くのか…
ここまでしてもらって「えっ?やだよ。」なんて言う彼女いると思ってんのか?
二人。
夜に授業はないらしく、気をきかせて席をはずしてくれた雷蔵君に感謝しながら今は二人でのんびりと三郎の部屋で時間を過ごしています。
「なぁ、○○。」
「ん?」
「そのうち夏休くるだろ、」
そうだね。と返すと、三郎が真剣な顔で迫ってきた。
なんだ、なんだ?と身構えてみると今度は少し照れた感じに目を泳がせながら、「夏休み中私の家に来い。その、紹介するから…」最後の方はかすれて聞きとれない声で言い切った彼の頭をポンポン叩いて、
「緊張するな…」
と、気の抜けた感じで返してやった。
ほっとしたのか私の胸元に顔を埋め、後ろに押し倒してきた三郎を受け止めながら畳みに体を預けると、襖のしまる音がした。
「三郎君。今とってもあまあまな雰囲気なんだよ。」
そんな言葉気に求めず、私の着物に手をかける少年に一生懸命私は私の身を守るために抗議を続けた。
(三郎!!少年特有の甘えに弱いお姉さま心を利用したな!!)