「おばちゃん、売り切れたよ。」
今日も見事に売り切って私は新しい職場の団子屋に意気揚々と帰ってきました。そんな私におばちゃんは6つお饅頭を手渡して、店の入り口の方を指さした。
「○○ちゃんにお客さんだよ。」
「ほい?おぉ…」
小さなお客様を見つけて駆け寄ってみると、この仕事を紹介してくれた恩人は気まずそうに私に笑いかけた。
「○○姉ちゃん久しぶり。」
「きり丸君元気そうで何よりだ。」
良い子だ。良い子だ。頭を撫でてやれば、照れ臭そうに年相応な反応をしてくれる。あぁ、可愛い奴だな。
「で、こっちのお客様はどうしたんだい?」
たまに遊びに来る1年は組の良い子とは違い、約1ヶ月ぶりに見る彼らがココいる事にちょっと不安になった。
団子屋
「雷蔵君に八君、兵助君、勘右門君。君たちが私に会いに来るなんて、変なの。」
真面目な顔で私を見る彼らは、正直怖い。私何かしたかね?
「○○さん」
「ん?」
「戻ってきてください。」
4人が私に戻ってきてくれと言って頭を下げたもんだから驚いちゃった。いやいや、私がいようがいまいが君たちの日常は何も変わらんだろ。
「私が学園にいようがいまいが何ら変わらないでしょ?私今の仕事気に入ってんのよ。」
「お願いです、三郎が…」
「三郎?」
久々知君から三郎と言う単語が聞こえて思わず食いつくと、気まずそうに彼らは口を開いた。
「○○さんがいなくなってから、おかしいんです。誰とも口聞かなくて…一心不乱に鍛練して」
「鍛練することは良い事じゃないの?」
「誰とも口聞かないのがですか?三郎がどういう奴か知ってるでしょ?」
「知ってる。」
「○○さんが帰ってきたら、元に戻るかもしれない」
「戻らないわ。」
「なぜ」
「三郎は私を追わなかった。それが三郎の答えでしょ?」
「だけど、今の三郎はおかしい。」
「私は、戻らない。私が今戻ったら、三郎はどう思う?自分が引き留めなかった女を友達が自分のところに連れ戻すなんて、みじめ以外のなんでもないじゃない。」
「なら、どうすれば良いんだ?」
「三郎が一人でいるなら、貴方たちが、三郎に関われば良い。」
「……」
「人に頼るんじゃなくて、自分で何とかしなさい。きり丸まで巻き込んで…」
話についていけず呆然とするきり丸を引き寄せて軽く頭を撫でれば、悲しそうにごめんなさいと呟く。この子のせいなんかじゃないのに。