なんとか、この時代に馴染み出した私は小松田君の尻拭いも終え、食事にお風呂も済ませて一人のんびり自室で過ごしてます。自室は、くのたま長屋のはじっこにあって、静かでのんびりできるけどちょっぴり寂しいです。
くのたま(主に6年)の皆に色々教えてもい、今では一人で大抵の事はできたりします。三郎が平成に馴れるのよりも早かったと思う…私すごくない?
ちょっと得意気な気分でさっき図書室で借りた中在家君お勧めの本を読んでいます。このページまで読んじゃおうか何てやってる私に珍しいお客様がやって来ました。
「えっと…はじめまして?」
「はじめまして。」
彼女…いや、彼女たちは、くのたま5年らしい。5年生の子とはあまり面識がないから、ちょっと不安だったけど、はじめましてと返してきてくれたから初対面だろう。
「で、今夜はどうしたの?」
黙りな彼女たちにちょっと困って話しかけてみると、真ん中にいるリーダーっぽい子が話してくれた。
「鉢屋三郎と恋仲なんですか?」
そりゃもうストレートに聞いてきたもんだからお姉さんちょっとビックリした。なんだろう、いきなり現れて三郎と仲良いとかムカつくんですけど…とかなのかな?でも、そんな険悪なムードじゃないし。困った。
「たぶんそうなのかな?」
困ったから、あやふやに返しておく。
「鉢屋は、そのつもりみたいです。」
おぉ、なんだ。恋仲だって堂々と言ってよかったのか。いやぁ、三郎嬉しいな…三郎は堂々とそう言ってくれたのだろう。なんか嬉しくなってきた。
「でも、」
「でも?」
「10も上の何処から来たかわからない女が嫁に行けるとお思いで?」
「いや、嫁ぐとか話飛んでない?」
さっきまでのルンルン気分は、くのたまの子の鋭い声でガラガラと崩れ去った。嫁ぐとか話飛んでないか…そう言ったはいいけど、最終的にたどり着くのはそこだ。それにこの時代の事だ…裕福な家の子は恋愛も自由にできないだろう。この学園にかようと言うことは、それなりに皆裕福ってこと…三郎の所もそうだろう。
だとしたら、どこの馬の骨とも知れないこんな女、嫁にもらうなんてしてくれないだろう。
「それに、鉢屋はこの忍術学園に通う以上忍者を目指してます。はっきり言って貴女みたいな凡人では、彼の重荷になるだけです。」
「あはは…本当の事はっきり言うな…」
流石にへこみます。でも、事実だ。
忍者ってのは、そんな簡単にやってける仕事じゃないだろうし、嫁が凡人じゃ大変だろう…もしなんかで家がバレたりして、私が人質にとられたりしたら重荷以外のなんでもない。
この時代で、私はあんまりにも三郎とお似合いじゃないと言うことだ。
「言いたいことはちゃんと分かったよ」
泣いたって仕方ないから、笑って彼女達に言うと、皆無言で出ていった。
なんか無性に悲しくなって、読みかけの本にしおりを挟むのも、灯りを消すのも忘れて、布団にもぐって一人泣いた。
あぁ、もう10歳若かったら。
涙。
(さよならの準備した方が良さそうね。)