「あっ雷蔵君だ!!」
"やっほー"と、手を振れば、キョトンとした後、
苦笑しながら雷蔵君がこっちに来てくれた。
雷蔵君とお姉さん
○○さんのおかげで、三郎は元気を取り戻した。
そもそもの原因である僕は、○○さんに謝らなければと思いつつもなかなか彼女に言えずに…むしろ会えずにいる。
三郎に言えばすぐに会えると思うけど、なんだかできない…僕こんなに臆病者だっけ?
委員会の仕事を終え、自室に戻る途中○○さんを見つけたのは、そんな事を考えていたときで、あまりにも都合がよすぎて内心すごい焦った。
そんなこと知ってか知らずか、○○さんは僕を見つけて声をかけてきた。
くったくのない笑顔、年のわりに幼い行動…本当に彼女は僕らより10ほど上なのだろうか?そう思うと、なんだか落ち着いて、彼女の元に勝手に足が動いた。
「ねぇねぇ聞いてよ雷蔵君。小松田君がね、"落とし穴あるよ"って教えてあげたのに、穴に落ちちゃってさ、困ってるの。」
あはは、と笑いながら、近くの大穴を指差すから穴を覗いてみると、小松田さんが困った顔で座っていた。
「○○さん、そこは助けを呼ぶところですよ」
「だって、いつものことだし、また落ちるだろうし。」
なら、通りがかりの人に助けてもらった方が仕事はかどるじゃない。
諦めたような声に、きっと苦労したんだろうな…と思いながら小松田さんを救出。小松田さんも小松田さんで、"落ちちゃいました"と、反省していない。
「雷蔵君ありがとね、お礼に後でお菓子あげるよ。」
「お団子ですか?」
「うん。昨日の余っちゃって、」
「○○さんらしい」
そう?
と、楽しげな○○さん。本当に明るくて優しくて…三郎が彼女を慕う気持ちがわかった気がした。
「○○さん、すいませんでした」
「どうしたの?なんかあった?雷蔵君謝ることひとつもないよ。
あるなら、三郎の方だから。」
○○さんは、いきなり謝られて、おどおどしたり、三郎と何かあったのか頬をふっくら膨らませる。
「謝らせてください。」
そして、僕はただ謝らせて欲しいと繰り返す。
「何に謝られてるのかは分からないけど、まぁわからないから許す。うん、」
事故完結に納得したのか、ニコニコ笑う彼女につられて僕も笑顔になる。
「じゃあ、僕は部屋でお団子待ってますね。」
「待っていてくれたまえ。」
なんだか、スッキリした。
(雷蔵君、お団子持ってきたよ)
(○○、私の分は?)
(えっ、三郎の?無いよ。)