外があまりにも明るくて目が眩んだ。こちらに背を向ける男のそれは思った以上に広く、それでも他の部位と変わらず白かった。
「ねえ、先輩」
「なんだ」
「先輩、色が白いから、目立つね」
ん? と彼が振り返る。なびく黒髪にも、端正な面立ちにも、胸がドキリとしてかなわない。
「……背中」
「ああ、これか」
得心がいったように、仙蔵は目尻を緩めた。視線がわずかばかり、自分の背を見ているようだ。けれどちっとも表情は変わらない。そこに走る赤い爪痕は、ひどく痛々しいというのに。
「痛くはないんですか」
「お前だって痛かっただろう?」
「……でも、きっとお風呂は染みますよ」
「気にすることはない。男からしてみれば勲章のようなものだ」
「そういうもの?」
「そういうものだ」
余裕綽々な笑みを浮かべた横顔を、ナオミは布団の中からジッと見つめた。布団から香る太陽の匂いと、自身の体臭。そこに交わる他者の匂いと、
「先輩」
「今度はなんだ」
「私、とても立てそうにないんですけど、明日の授業はどうするんですか」
すると仙蔵は、本日で一番食えない笑みを彼女に向けた。クッ、と喉の奥で笑い、眉を歪めながら目を細めたそれは、嘲笑に近かったように思う。
「なにを言う。仮にもくノ一の卵だろう」
「――――……」
モゾモゾと布団の中で寝返りを打ちながら、ナオミは「当たり前です」と答えた。つとめて反抗的な声音になったことに、人知れず安堵する。
その頭を、大きな掌が、「いい子いい子」と撫でた。
▽事後仙なお。全然よくわからない…
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