キーンコーンカーンコーン…
「昼だー!!!」
「早く購買行こうぜっ!」
午前の授業が終わりやっとお昼になる。
私もお昼を食べようと思いかばんから弁当を出したその直後。
「名前ちゃん。」
「……また来たんですか。」
なぜか目の前に高尾君がいました。
「そんな風に言うなよ。昼一人だろ?良かったら一緒に食わない?」
……ちょっとだけ心が動いた、なんて口が裂けても言えない。
高校に入学してからまさか一緒にお昼を食べてくれる人がいるとは思わなかった。
いや、最初のころはそういう子達はいた。
でも気がついたらいつの間にか一人で食べるのが当たり前になっていた。
「……別に、良いですけど。」
「よっしゃ!じゃあ俺のクラス行こうぜ。連れが一人いるけど良い?」
むしろ私がお邪魔するのだから文句なんてあるわけもない。
「構わないです。」
こうしてまたクラスの人たちに好奇の目で見られながら私は高尾君のクラスへと向かう。
「真ちゃーん、お待たせ。」
「遅い……誰なのだよ。」
あ、この人。先生探すときに一々視界に入って邪魔だった緑頭の人だ。
「苗字名前ちゃん。
話したろ?マネになってもらいたい子がいるって。」
「…あぁ、貴様がそうなのか。…まぁいい。早く食うぞ。」
ほーい、と言いながら私の席を確保してくれる高尾君。
「………。」
先ほどから無言である。特に高尾君が真ちゃんと呼んでいる緑頭の人は心なしか機嫌が悪そうだ。
…もしかしたら私がここに居るのが嫌なのかもしれない。
「ってかさ、名前ちゃんってご飯それだけしか食べないの?」
突然高尾君にそんなことを聞かれる。
「ぇ?あぁうん。」
「よくそんな少なくて足りるなー。」
「帰宅部だし……元々小食だから。」
「へー…ってか真ちゃん何さっきから怖い顔してんのさ!」
…何か高尾君と真ちゃんって人、仲良さそうに見えないな。
「あの…もしかして私がここに居るのご迷惑ですか?
もしそうなら…「お前、この前の実力テストで学年1位をとった苗字名前か?」
……はい?実力テスト…?
あぁ、そういえばそんなのあったな。偶然ヤマが当たって満点取れたテスト……って、
「あれ?もしかして学年2位の緑間真太郎って……。」
「俺だ。」
噂に聞いたことがある。
頭が良くてバスケでもすごい才能を持った変人…。
もしかしてテスト結果が私より悪かったのを根に持ってるの?
いや、でも彼とは面識がないし……
「まさかとは思いますが……テストで私が1位取ったことを根に持ってるんですか?」
「そんなわけないだろう。俺の人事が足りなかっただけだ。
貴様…苗字と言ったな。単純にすごいと思っていただけだ。」
あー、つまり睨んでいたわけでも機嫌が悪いわけでもないと。
「でも緑間君のがすごいと思いますよ。
バスケ部でレギュラーとりながらもテストで2位とっちゃうんですから。」
「…俺がバスケ部レギュラーなのを知っているのか。」
「クラスの男子たちがキセキの世代、緑間真太郎って騒いでるのを聞いたので。」
「そうか……。」
「…なーんか俺おいてけぼりじゃね?俺だって一応学年25位なんだけど。」
「ふん、貴様はいつも詰めが甘いのだよ、高尾。」
「高尾君も頭良いんだね。」
そう言って名前ちゃんが俺を見る。
やっべ、めっちゃ可愛い!!
彼女は笑うってことをしないけど……何て言うか、美人だ。
クールな態度の仲にも残る幼さ?
って、変態かよ、俺。
「あ、そろそろお昼終わりそうだ。じゃあ私は教室に戻ります。高尾君、お昼誘ってくれてありがとう。」
「だから敬語なくていいって。」
「緑間君も…何かごめんなさい。」
「構わないのだよ。こちらこそ、高尾が無理を言ったのだろうからな。
…だが、こうして学年1位と出会えたのだから良いのだよ。
次は人事を尽くした俺が1位をもらうのだよ。」
……さっきから気になってるんだけど何なんだろう、人事人事って。
人事を尽くして天命を待つ
ってのが座右の銘だとでも言いたいのかな?
それにあの語尾……天才は変人、とはよく言ったものねー。
「…うん、私別に順位にこだわりとかないから良いよ。」
「ははっ、やっぱ名前ちゃん面白いわ。」
私は何も面白くないのに……高尾君は何が面白いんだ?
「ってかさ、昨日あの後考えてくれた?」
「あの後……あぁ、マネージャーの事?
それなら断ったでしょ。私はバスケが嫌い。だからやらない。」
敬語を使うとまた煩そうなのでタメ語に切り替える。
マネの件に関して言えば、例え了承したとしてもバスケ嫌いな人間にマネージャーなんてやられても選手だっていい迷惑だ。
「高尾、」
「…何だよ。」
「お前が何をしたいのかは知らないがバスケを好きでない奴にマネージャーを頼むな。
それに…人事を尽くすことをしないような人間にマネージャーになどなって欲しくないのだよ。」
緑間真太郎……改めて思う。
こいつうざい、
「だってさ。じゃあ「じゃあ代わりにメアド教えてよ。」
何の代わりでメアドを教えなくちゃいけないんだろう。
「いっただろ?俺は名前ちゃんにマネージャーやってもらいたいって。
俺の直感だけど…もし名前ちゃんだマネージャーやってくれたら秀徳はもっと強くなれると思う。」
自分たちの力で強くなれよ。
マネージャーの力後時で強くなれるわけないだろ。
……本当、青春に全てを捧げてるような奴は夢ばかりみる。
それが悪いとは言わないが、あいにく、私はそういう類の人間が嫌いだ。
「…分かった。じゃあ条件があるわ。」
「……条件?」
「メアドを教えてあげる代わりにもう私にマネージャーをやれだとか言わないで。」
「……。」
これならどっちに転んでも私の被害は最小限に抑えられえる。
…どっちかって言うとメアド聞かれたほうがマシなんだけど。
「……良いぜ。」
「……ぇ?」
ずいぶんとあっさり引き下がるんだな。
「絶対名前ちゃんのほうからマネージャーになりたいって言わせてやるから。」
……この男はどうして自分の発言にこんなに自信がもてるんだろうか。
正直、その能天気さを少し分けて欲しいくらいだ。
ピッ
「じゃあ後でメールする。」
キーンコーン……
高尾君とそんなやり取りをしていたらいつの間にかチャイムが鳴ってしまった。
ギリギリ、先生が来る前に教室に入る。
相変わらずクラスの人たちからは好奇の目で見られる。
私が高尾君と話すのがそんなに変なのか?
それともただ単に面白がっているだけなのか……。
なんて考えていると突然携帯が震えた。
開くと新着メールが一件。
差出人は不明だが本文を見てすぐに高尾君だと気付く。
XX/XX 13:03
Sub 無題
本文
高尾和成。
これが俺の漢字ね。
絶対名前ちゃんの口から
マネやりたいって言わせてやるから。
-END-
何か宣戦布告された気分だ。
なんて返信しようか悩んでいると先生が入ってきたのでとりあえず後回しにすることにした。
メアド教えてよ。
(狙った獲物は逃さない。)
(それが鷹。)
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